かえでワールドで活動中の一人のメイプラーのブログ。

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第九話『潮風は錆びていた』

  
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 今回の話は、一度メイプルワールドから離れようと思う。


 ――夏。
 多くがその暑さに苦しみ、蝉達の歌に苛立ちを募らせる――インドア派な者達にとっては、中々に耐え難い季節。
 身体を伝う汗は肌にへばりつき、衣服には重みすら感じる不快感を与える。

 地獄のような猛暑の中でも、人々はいつものように街を往き。
 明日は我が身と思う事もなく、熱気にやられて死んでいく。

 毎年恒例、当たり前のような風景。
 倒れる奴が悪いと言わんばかりに、社会の歯車は廻り続ける。

 ああ。冬が待ち遠しい……。



 ――さて。
 そんな中、冷房の効いた部屋で快適な生活を送る者が一人。

 そう。中の人Ωである。
 その視線の先に広がるのは、果ての見えない群青だった。

 夏といえば真っ先に連想するのは海だろう。真っ赤な太陽に白い砂浜。それに添えるのは色とりどりの青春で――
 多くは、きっとそんな光景を脳裏に描いて、かつての瞬間、あるいは空想に思いを馳せているに違いない。

 しかしそこに広がる大海は、悲しきかな、そんな甘酸っぱい世界ではない。

 空に舞うのは鉄塊で。
 直撃を受けた者は炎と黒煙を撒き散らしながら、空を黒に染めていく。


 もう一度言おう。そこは果てしない海の上。
 ――その世界では、終わりの見えない戦争が、今もなお続いている。






 惑星World of Warships――
 それが、洋上の戦争の舞台だ。
 プレイヤーは四つの艦種から自らに合ったものを選び、戦いに挑む。


 一つ――駆逐艦。

 高い機動性と隠蔽性を駆使し、見えぬところから魚雷を放ち敵艦を轟沈させる。
 小型であるがゆえ敵の攻撃を避けやすく、危機に陥っても煙幕を撒いて姿を隠す事ができる。

 言うなれば、海の暗殺者である。


 一つ――戦艦。

 圧倒的射程と、生半可な砲撃ではびくともしない装甲を以って敵を蹴散らす、大型艦。
 ひとたび斉射を受ければただでは済まされない強大な力は、覇王と呼ぶに相応しい。


 一つ――巡洋艦。

 端的に言えば、駆逐艦と戦艦の中間に位置する艦艇。
 かと言って器用貧乏かというとそうではなく、状況に応じて臨機応変に戦う事ができる。
 巡洋艦の真価を引き出した者こそが、この世界を制すると言っても過言ではない。

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  戦闘が開始され、海域を進むとやがて敵艦が現れる。赤い旗は敵の防衛陣地であり、占領をすれば勝利だ。

 worldofwarships 2016-07-10 17-58-50-850
  遠方に敵艦を捕捉した。主砲の射程圏内に入るまでは慎重に行動しなければならない。

 worldofwarships 2016-07-10 18-01-00-343
  敵に狙いを定め、撃つべし! 敵も動くので着弾までの偏差に気をつけなければならない。(ちなみにこの後返り討ちにあった)


 そして、最後の一つが航空母艦。

 略して空母。他の艦艇と異なり、空から海域全体を見下ろしながら、航空機を操作する。まるで別ゲーである。
 全体を常に見渡し、的確な状況判断を求められる難易度の高い艦種だ。
 なお艦自体に敵艦艇と交戦する能力は無いに等しいので、死なない立ち回りも要求される。
 先に空母を失った艦隊が、高確率で負けると言われるほどに重要な役回りである。



 これらに加え、その艦艇の国籍によっても特徴が大きく異なる為、非常に幅広い戦略性を要求される。


 ちなみに中の人Ωは日本空母を好んで使っている。
 理由は他者を空から見下しながら、一方的な攻撃が可能だからだ。
 攻撃の周期は長いものの、その一撃はうまくいけば敵艦を容易く瀕死に追い込む程である。

 しかしまぁ、戦場が高Tier(Tierとはランクのようなものだ)になるにつれ敵艦艇の対空能力も向上し、仕事を奪われていくわけだが……。



 空母の主な仕事は以下の三つだ。

・敵艦艇を上空から捕捉、見失わないようスポットし続ける。

 特に隠密行動を得意とする駆逐艦は捕捉さえしてしまえば無力に等しい。
 本来前線に出るべき場面で出られなくなり、敵艦隊の戦線は崩壊の一途を辿ることになるだろう。


・味方艦を敵空母の攻撃から護衛する。

 先述した通り、空母の雷撃は威力も精度も抜群であり、一度食らったらひとたまりも無い。
 戦闘機で交戦させる事で、味方艦を護衛する事ができる。
 ただ、高Tierになると戦艦は対空能力の高い巡洋艦と共に行動する事が多くなり、意外とサボっても何とかなったりする。


・敵艦艇の殲滅

 狙うのは孤立した戦艦、あるいは巡洋艦だろう。
 高Tierになると攻撃対象の防空能力が非常に高くなる為、発見した駆逐艦に攻撃をする事が多くなる。
 しかし駆逐艦は羽虫のようにちょこまかと動き回るがゆえ、攻撃を当てにくい……。

 これら三つの仕事を同時にこなさなければならず、常に気を抜けない艦種だ。

 はじめはリアルの友人の付き合い関係でたまに適当にやろうかという気概でいたものの、
 アニメ『ハイスクール・フリート』のおかげで撃て撃て魂に火が付いてしまい……。
 いまや日本空母のTierは9。最高ランクの一歩手前だ。

072402.jpg


 ちなみに元々中の人Ωに軍事系の知識は全くない。
 戦艦とかただの戦える船という認識でしかなかったし、むしろ今でもそんな感じだ。

 吹奏楽関係で『第五福竜丸』は知ってるぜ! ……って思ってよく調べたら、これマグロ漁船だし。恥ずかしいわ。


 
 今はこの戦いを、メイプルワールドでの生活と並行してやっている。
 もしかしたら、また船関係の記事を書くかもしれないが、遠い先の話だろう。そんなに書く事が思い浮かばない。





Ω < つい最近、ノートPCの『A』のキーがぶっ壊れまして。

Ω < メイプルのチャットは不自由だわ、船のゲームでは左に転舵出来ないわで、非常に不便です。

Ω < 極力言葉が通じるように工夫はしているつもり。↓読めるかな?

Ω < コイキングめttyレぢょ(先日のメイプル内の会話より)



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[ 2016/07/24 19:35 ] World of Warships | TB(-) | CM(0)

第八話『俺のパソコンもたまに勝手にリブートする』

   
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 1.異なる世界は混じり合う

 メイプルストーリーには、複数の『並行世界』が存在する。
 例えばそれは『かえで』ワールドと呼ばれるものであったり、あるいは『さくら』ワールドと呼ばれていたりするものだ。
 それらは【メイプルワールド】とキネシスの生まれた【パラレルワールド】のように、互いの因果律が影響を及ぼし合う事も無く、同じ時間、同じ場所だというのに、異なる運命を辿っている。
 不思議な事に、文化にも僅かなずれがあり、その違いを探すのも楽しみ方の一つかもしれない。


 ――さて、時は4月20日。美しく咲き乱れる桜がやがて儚く散り始めた頃。
 それまで五つ存在していた並行世界が三つに統合され、融け合った。

 『ゆかり』ワールドと『あずさ』ワールドの二つが合わさり、新たな『ゆかり』ワールドに。
 そして『かえで』ワールドと『さくら』ワールドが合わさり、新たな『かえで』ワールドに。

 メイプルワールドでも、桜の花は散っていった。
 褪せた世界に彩りを与えるべく、最後の役割を背負って散った。


 心機一転というべきか、世界中が新たに生まれた『交点』に盛り上がりを見せる。
 あるいは武陵の道場や北の海の果てにある【海底の塔】シードなどといった要所の戦況は、激化していった。


 その頃、多くのモンスターがドロップしたのが、この『思い出の欠片』というアイテムである。

 071001.png
 電流を帯びた角砂糖のようなこのアイテム。きっと溢れんばかりの思い出のエネルギーが詰まっているのだろう。

 それを200個集める事で、かえでワールドか旧さくらワールドの象徴を模った椅子と交換してもらう事が出来た。

 071002.png
 (今回のイベントも達成が期限ギリギリだったのは内緒である)

 
 もちろんルナはかえでワールドの住人なので、かえでの椅子と交換してもらった。
 かつて分散した世界が存在した事を、忘れないよう願いを込めて。

 世界は収束しつつある。誰もがそう思っていたこの時、他とは異質なる新たな世界が生まれようとしている事に、気づける者は一人として居なかっただろう。



 2.そしてまた芽生える世界


 ……。
 …………。

 ――ここは、どこだ……。
 ――微かな揺れを感じる。まるで空を飛んでいるかのような。

「ファントム様、あと五分程で【エレヴ】上空へと到着いたします」
「……わかった。うーん、ちょっと緊張するな」

 ――ファントムって誰だ? 目の前に居る執事のような恰好をした男は?
 ――……なぜ自分は、勝手に喋っている?

 朧げな意識は頭が張り裂けそうな不快感を伴う混乱と共に閉じていく。
 彼がメイプルワールドの英雄『ファントム』として転生し、この世界に降り立った事に気付くのは、シグナス率いる騎士団をヒルラからの侵攻から救った後の事である。




 誰もが新たに生まれた未知を求め、活気に満ちた眼差しで旅をする。
 ここはルナ達が生きる『かえで』ワールドとは似て非なる場所。並行世界が統合し少し経った後に誕生した、産声を上げたばかりの世界である。

「誰かー、魂の書を買い取りませんかー」
「……どうやって買い取るんだよ」
「あ……そういえばそうだったwww」


 街中からそんな会話が聞こえてくる。
 決して人々が貧困に苛まれている訳ではない。むしろ狩りで得られる収入はルナ達の生きる世界とは比にならぬ程多いだろう。
 
 それが、この世界が異質と呼ばれる所以の一つ。
 
 ――この世界では冒険者同士での金銭、あるいは物の取引の一切を、禁じられている。

 己の力で金を稼ぎ、己の力で装備を強くしていく。
 かといって、決して一人の力で世界を制する事など不可能な、理不尽極まりなく、最高に刺激の強い世界。
 
 人々はその世界を、『リブート』と呼ぶ――。





 ファントムとして生まれた彼が憶えていたのは、『ハートキラー』という自身の名。
 そしてかつて自分は英雄と呼ばれる大層な存在ではなく、悪人であったという事だけだ。

 071003.png
 手の甲には、旅の途中で突如あらわれた稲妻の形をした蒼い傷痕。
 痛みこそないものの、あまりに気味が悪いので手から発する光の波導で普段はそれを隠している。


 はじめは新たな世界にうろたえていたものの、親切な人間が多くすぐに馴染む事が出来た。

 071004.png
 強大な敵が現れる事もあったが、数の前に敵うものなど居ない。

 ――自分は何の為にこの世界に生まれてきたんだろう。
 理由を探す長い旅路が、この日から始まったのだった。


 続く!

 
 


Ω < あ、そうそう。

Ω < これから毎週土曜日か日曜日にブログを更新するつもりなので見てください! 目指すは有言実行……。

Ω < どうでもいいけど、Aキーが壊れてて文章入力するのめっちゃ苦労した。

Ω < おかしいところあったら指摘してください。

続く!
[ 2016/07/10 15:38 ] メイプルストーリー アップデート | TB(-) | CM(2)

第七話『夏休みの宿題は先に終わらせましょう』


   
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 2016年3月、某日。メイプルワールドに一匹の猫が降り立っていた。
 時には闇の組織のエージェント、そして時には何処からか現れた流浪の記者として活動するその猫は、この世界の〝調律者〟と呼ばれる存在である。
 少なくとも中の人は、〝調律者〟が現れてから、世界を取り巻く防衛機能が強化されている事に対し、些かの憤りを感じていた。
 ――そして〝調律者〟は、メイプルワールドの全ての住民に三つのミッションを依頼する……。

調律者
***********************************************

1.エリートモンスターを500匹倒せ。
2.エリートボスを100匹倒せ。
3.フィールドに現れるルーンを100回起動せよ。

***********************************************

 依頼の報酬である〝【称号】闇のオーラ破壊者〟は、多くのプレイヤーが羨むほどに強力なものである。
 30日間という効果持続期間が設けられているものの、自身の能力が上昇する事は間違いない。それまで、これほどまでに強力な称号は実装されていなかったからだ。
 
「拒否する」

 しかし、ルナはそう告げたのだった。
 その返答はあまりにも淡々としていた。それどころか、許可、拒否の選択をしたのかすら怪しい。会話の途中でエスケープしたのではないか疑ってしまうほどに静かに会話は終わったのだ。

「そもそも、効果が30日しか持続しないとかふざけているのか? それなら少し弱くても以前死ぬ思いをしながら取得した〝【称号】ピン我一体〟で充分だ」

 加えて、ルナファミリーの動力源である〝中の人〟の精神力は酷く憔悴していた。
 現実世界において〝就職活動〟と呼ばれる戦争に巻き込まれ、攻撃は空振り、徒労に終わるばかりの戦い。ほとほとくたびれかけていたのは、言うまでもない。

 ――結局、今回のイベントも静かに過ごす事になりそうだな……。

 ルナは心の何処かでそう呟きながら、のんびりとこの世界で日常を過ごす――。


    *


 そして月日は過ぎて、4月18日。イベント終了の二日前。

「ごめんやっぱエリボス倒すわ」

 何が原因か分からないが、刃神ルナの死闘が幕を開けた……。
 唐突にやる気が満ち溢れたのだ。これは伏線でもなんでもなく、ただ、単純に。
 依頼を遂行していないとはいえ受諾だけはしておいたのが幸いし、狩りの合間に現れたエリートボスを撃破していた刃神ルナは、既に30匹のそれを討伐していた。
 残り、約70匹――それを2日間で終わらせるのは、さすがの刃神であれども容易くはない。
 ――だが……いけるッ!
 そんな根拠のない確信を胸に、ルナは狩場を駆けだした。

 そしてややあって。何匹かエリボスを倒したのち。

「あ、やっぱこれ無理だわ」

 一時的に世界を取り巻く闇の気が増加しているのか、普段より早くエリートボスと邂逅する事が出来たものの、このペースでは間に合わない。
 諦めるしか、ないのか……。
 そう思った矢先、この世界のキャッチコピーを思い出す。

『育てて、喋って、協力して、冒険する! っぷる~』

 今となっては真っ黒な嘘に過ぎないこのキャッチコピー。しかし切羽詰まったこの状況、一度信じてみるしかない。

「みんな、オラにエリートボスを分けてくれ!!!!」


 というと、少し恥ずかしいので、拡声器やフレンドチャットを使いつつ協力者を募る。
エリボ1

 結構集まった!
 いけるッ! これならいけるぞ!

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 ほとんどの人間が既にクエストを完了している中、集まってくれた。付け焼刃の絆とはいえ、多くの人間の力が一つとなった日であった。

042503.png
 時には他のパーティと衝突しつつも……。

残り1匹!
 少しずつ、少しずつその討伐数を増やしていき……。

 そして、とうとう――

042001.png
 いっけえええええええええええ!


 終わったああああああ!!!
 ありがとォーーーーーッ! くろのーーーーーッ!!!! ありがとーッ!!!(GANTZ的なノリ)
042505.png
 

 手伝ってくれた人ありがとーーッ!

042002.png


「ふう……これが友情――私達は協力する事を、強いられてるんだ!」

042003.png


 これ期限30日じゃねえか。クソゲーだな。

 


 
[ 2016/04/25 12:28 ] メイプルストーリー アップデート | TB(-) | CM(0)

【お知らせ】ちょっと現在……。

当ブログのHTMLやCSSを独学で魔改造しております。
数ヶ月更新もなく、顔を覗かせてくれてる方はいないでしょうけど、しばらく見苦しいレイアウトを曝してしまうかもしれません。

工事が終わったらこの記事は消しますので、それまでの間、何かこのブログぐちゃぐちゃじゃね? って思ったら、
生温かい目で見守っていただけると助かります。

*********************
当ブログ管理人:オノユリス
メイプルネーム:刃神ルナ
twitter : @melpuru
**********************
[ 2016/04/13 21:10 ] 未分類 | TB(-) | CM(0)

第六話『この中に一人女王がいる!』

  
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* 王宮の侍従 *

「先ほどのメイド長の失礼な態度、お詫びします。王女様の面倒をみながら王宮のほかの方々の面倒も見なければならないのでメイド長も大変だと思います」

 王宮の侍従をしていたと言うイアンは、深々と頭を下げながら謝罪した。若くして洗練されたその礼儀に、それまで苛立ちを覚えていたルナ達は馬鹿馬鹿しくなって恐縮してしまう。

「……私達は王女に謁見して、城が浮かび上がる当初の事を尋ねたかっただけだ。それがこれほどまでに除け者にされるとはな……」
「ええ。今の状況が続けば、ルナ様達は恐らく一生王女様には会えないでしょう。そこで、いい事を思いついたのですが、試してみないですか?」

 イアンから発せられた「王女様には会えない」という言葉にルナ達は違和感を覚えた。交流こそしていないものの、王女には既に会っている。
 だけどそれは、言葉のあやだろうという事で片付けてしまった。

「市場にいるクリプ兄さんが売っている高級ハンカチを“王女様に捧げる献上品”だと言ってメイド長に渡してください。そうすればきっと席をはずしますから。その隙にルナ様は王女様に会ってお話をするのです」
「そんなうまくいくものか……? それ」
「物は試しだ。やってみるしかあるまい」

 ルナ達は藁にもすがる思いで市場へと向かった。
 〈クリティアス〉の市場にも、現在のメイプルワールドと同じようにさまざまな武器、防具が売られている。別に大した品が売っているようには思えなかったが。

「お前がクリプか?」
「おう、いらっしゃい」
「高級ハンカチをくれ」
「へぇー、お客さん旅の人か。結構な金を持ってるようだな?」
「……いくら払えばいい」

 クリプは悪い商売人の顔をする。高級と名のつくくらいなんだから、ルナ達もそれなりの額は覚悟していた。

「へっ……10万だ。どうす――」
「買う。ありがとう」
「…………ま、まいど」

 ルナのポケットマネーは860万――大した額ではない。そもそもモンスターを倒せれば一匹あたり1000メルほど手に入るのだから。どんなに貧乏な冒険者だとしても10万の商品を買う事など容易い。
 そもそも、メイプルワールドの住民達は随分と呑気な商売をしている。安定しすぎている――とも言える。冒険者間の物価はインフレーションの道を辿る一方だ。
 ただの真っ白な書物を一枚やりとりするだけで、少なくとも2000万もの大金が動くのだ。真っ白である。そこらへんの自由帳と同じだ。
 どこぞの海底都市では買った剣の値段が売却値よりも安いという事があった。魚介類に商売させるからこうなるのだ。呑気を通り越してバカである。

「これが高級ハンカチか……。確かになんか青く光ってるし高級っぽいな」
「刺繍に魔法が込められてるようですのね。確かに持ってれば身にかかる危機は防げそうですの」
「ほう、便利だな。――それで、これをあの召し使いに渡せばいいのか」

 ルナ達は旅館に戻った。根拠のない期待から、どことなく歩く速度が早くなっていた。

「おい。召し使いはいるか」
「何かご用ですか? 申し訳ないですが王女様の謁見を許可できないことに変わりはありませんよ」
「おうじょさまにさしあげるけんじょうひんをもってきました(棒読み)」
「こ、これは……! 災いを防ぐ魔法の刺繍が施されたハンカチですわね。感謝いたします。これこそまさに王女様に必要なものです。一刻も早く王女様にお渡しします」

 そういうと、召し使いは急ぎ足で旅館の外に出て行った。
 王女様は目の前にいるというのに、どういう事だ……?
 しかしこれは、王女と接するまたとないチャンスだ。ルナは王女に近づき、声をかける。

「お前が〈クリティアス〉の王女、ミリアムか。少し話がしたい。拒否権はない、わかったか」
「ちょ、ちょっとルナ! 一応王女様ですのよ! そんな最終的にやられそうな悪の組織の中ボスみたいな話し方やめなさいですの!」
「あ、あなた方がパルマとお話しているのは何度も見ました……。ですが、申し訳ないですが……本当に私は何も知らないんです……」
「めっちゃ怯えてるじゃないですの! 謝るですの!」
「うっ、す、すまない……」

 しかし、ミリアム王女の怯え方は普通ではなかった。
 そしてぽろぽろと涙を溢し始めた。

「ううぅ……、突然城から逃げなければならない状況も怖かったのに……。お父様から頂いた大切なクシまで失くしてしまって……毎日が不安で仕方ありません……」
「クシ……?」
「そ、そうです! 本当に申し訳ありませんが……ルナさん、よろしければ私が失くしたクシを探してきてくれませんか……? それがあれば心が落ち着くと思うんです……」
「それは随分と難易度の高い依頼だな……。森の中にいる数多くのモンスターの中から一つのクシを見つけろというのか……」
「はい……。モンスターの手に渡っているとすれば、もう私にはどうする事も出来ないので……ぐすん……」
「あーもう、わかった。探してくるよ……」


 ***

 森の中で燃え上がる武器の亡霊達を、ルナはただひたすらに斬り伏せる。
 その時、一匹の亡霊が古めかしい木のクシを落とした。

「ん? これかな。なんでこれを亡霊が持ってんだよ……」

 野暮である。
 ルナ達は王女の元へ戻った。

「私の木のクシを本当に持ってきたんですか? ありがとうございます! 高いものではないですが……私にとってはただ一つの宝物なんです……」
「よかったですのね!」
「…………」

 王女はほっとした様子こそ見せたものの、未だ浮かない顔をしている。
 避難生活でそれほど疲弊しているのだろうか。大事をとってルナ達は一度撤収しようとした。その時、王女の表情に何か決意のようなものが揺らめき始める。

「……恩人であるルナ様方に、これ以上嘘を吐くわけにはいきませんね」
「何?」
「本当のことを申しますと、私は本物の王女ではありません」
「……なんだと?」

 パルマの不可解な行動から何となくそんな気はしていたものの、予感が事実となるならば、それは驚愕という波となって押し寄せる。

「あの日――国王陛下がお姿を消した理由を未だ私達は知りません。それで残された王女様を護るため、しがないメイドだった私が王女様のふりをしていたんです。……見ての通り、私が上手に王女様のふりが出来なくて、パルマ様は焦っていらっしゃいます」
「ま、待て。そうすると、本物の王女は今どこで何をしているんだ」
「……私達と一緒に逃げて身を隠しています。いくら恩人とはいえ、あの方の場所をお教えするわけにはいきません。……そろそろパルマ様がお戻りになります。お話はここまでです」
「そんな……」
「心優しい旅の方。私からお話することはもう出来ませんが……あなた達は信頼できます。この〈クリティアス〉を……そして可哀想な王女様を、どうか助けてください……!」

 ミリアムは本当の王女を護るための偽の王女。そして本物の王女は他に存在する。
 しかしミリアムは「王女は一緒に避難している」と言っていた。こんな落ち着かない状況じゃ遠くまで逃げるのは無理がある。

「……王女は間違いなく、この近くにいる」
「ええ……でも私達は王女様の情報を何一つ持っていないですのよ。“王女”なのだから、性別は女、ということくらいしか……」
「ミリアムは既に王女じゃないと言っているし、それを覗けば私達が出会った女性は……四人か。仕方ない、手探りになるけど彼女達に声を掛けてみよう」


 ――容疑者1.未だデレを見せないメイド長・パルマ


「おい、召し使い」
「なんですか? 私はあなたに仕えているわけでもないのに、馴れ馴れしい……」

 声を掛けたはいいが、この老婆が女王……? そんな夢のない話あってたまるか。
 とはいったものの、現実は非情である事が多い。違いますようにと天に祈りながら、ルナは尋ねた。

「単刀直入に言う。本物の王女はどこだ?」
「はい? 本物の王女様ですって? どこでそんな話を聞いたんですか? 全く意味がわかりませんね」

 一つの問いに対し、四つの反撃をしかけてくるとは、さすがメイド長。あなどれない。
 あくまでしらを切るつもりだと察し、ルナも直球で攻めることにした。

「お前は女王か?」
「冗談でもそんなことを軽々しく口にするのはおやめなさい。一介のメイド長でしかない私と女王様とを一緒にするなんて……話になりません!」
「そうか。まぁそうだよな」

 なぜかルナ達は安堵の息を漏らしていた。

「……しかし、今のお話で〈クリティアス〉に降りかかった災いの恐ろしさを実感しました。外の世界の方々が、王女様のことも、私達のことも全て忘れ去ってしまった時代に生きているという事を……。〈クリティアス〉は一体これからどうなるんでしょうか……」



 ――容疑者2.ペットのフクロウといつも一緒! 武器商人のニタ

「私と翁加は森でモンスターを相手にしていることが多かったから、武器商人のことについては殆ど知らないんだが……」
「私に任せるですの。街中では私の方が魔法使いってこともあって親しみやすいですの」

 斧百合はニタの居る方に向かっていった。

「いらっしゃいませぇ。あら? 斧百合ちゃん」
「ごめんなさいですの。今回は買い物じゃなくて、尋ねたいことがあって……」
「尋ねたいこと、ですかぁ? ……あら? そちらの方は?」

 斧百合の背後にいたルナに、ニタが気づく。

「あー、こいつは刃神ルナですの。私の旅の仲間ですのよ」
「そうなんですかぁ! はじめまして!」

 そう言ってニタはルナに向けて煌びやかな笑顔を見せた。まぶしい!

「よ、よろしく……。ところで、消えた王女について何か知らないか?」
「王女様ですかぁ? 旅館のほうに避難しているという事は存じてますよぉ。でもごめんなさい……店のお仕事が忙しくって、直接お会いしたことはないんです……」
「そうか……変なことを聞くが、あなたが女王様本人なのではないか?」

 ルナも自分で不自然な問いかけだとは分かっていたけれども、こうするしかなかった。一人ずつ、虱潰しに探していくしかないのである。
 しかしニタは顔を真っ赤に染めて否定した。

「へ、わ、私が女王様? そ、そそ、そんな! 私は一介の武器屋の店員に過ぎませんよ! それに私のお父さんは、王様ではなく南東で警備をしているドストフという兵士ですよぉ」
「ま、マジで……」

 それもそれで、衝撃の事実ではある。あんなむさ苦しいおっさんからこんな可憐な少女が生まれるなんて……信じられない。

「も、もうっ! びっくりさせないでくださいよぉ。面白い発想ではありますけど……そういう冗談はもう少し仲良くなってから……ね?」
「あ、ああ……。悪かった」
「王女様ってどんな方なんでしょうねぇ? きっととっても綺麗なんだろうなぁ――」

 結論から言えば、ニタは王女ではなかった。
 だがそのまぶしい笑顔が、調査に疲弊していたルナ達を癒したのもまた事実。

「……もうあの子が王女様でいいんじゃないかな……」

 そんな呟きは明けない夜空に溶けていくだけである。


 ――容疑者3.魔法の解析ならお任せあれ☆女教師・ベアトリーチェ

「あら、ルナ様方ではありませんか。お久しぶりです」
「…………」
「どうかされましたか?」
「……ないな」
「い、いや念のため聞くですの!」
「いやだ! 例え母国ではないとしても! こんな女性が王女様だなんて信じたくないッ!」
「私が王女……? 面白い冗談を言いますね。ですが“ヘカトン陛下”の一人娘である王女様がこんなおばさんなわけないでしょ?」

 それな。

「あなた方がなぜ消えた王女様の行方を捜しているのかわかりませんし、そもそも消えた理由すら不明な現状、あなた方に何らかの助言をするのはやめておきます。あなた方を信頼していないわけではありません。ただ単に、無責任な言葉で他者を翻弄したくないのです」
「ああ……。変なことを聞いてすまなかった」

 ベアトリーチェは高度な魔法を扱う大学の教師なだけあってよく出来た人間である。
 今のルナには魔術は使えない。しかしこれがもしその才覚に目覚めていたとしたならば、彼女に師事していただろう。


 ――容疑者4.いたずら魔法少女☆ビアンカ

 ビアンカは魔法大学の生徒だ。その性格はどこかルナに似たものがあり、それは彼女自身自覚していたことである。
 ゆえに、声を掛けるのに手間は掛からなかった。

「ビアンカ」
「あらルナじゃない。久しぶり」
「突然で悪いんだが、消えた王女について教えて欲しい」
「王女様? え、消えたの? じゃあ今はいないんだ」
「そこからか! ……いや、違うな。もしかしてお前が王女本人なんじゃないか? いや、そうだろう!」
「唐突にあふれ出すその自信は一体どこからきたんですの……」
「私が王女? そんなわけないでしょ。王女として生きるとか、そんなつまんない人生なんて考えただけでゾッとするわ。絶対に嫌よ」
「……そういう考え方もあるのか」

 ***
 
 結局、容疑者として尋ねた女性陣は皆王女である事を否定した。本当の女王が誰なのか、未だ確信は持てないまま、ルナ達は街中で途方にくれていた。

「結局調査も行き止まり……。誰か救いの手を差し伸べてくれる人はいないのですの……?」
「いや……一つだけ分かったことがある」
「え……なんですの?」
「この事件が迷宮入りだという事だ!」


 続く!!




 尺の関係で打ち切りました。
 次回! 第七話『ドキドキっ! 王女様は男の娘!? 閉ざされた王国で巻き起こる禁断の情事(はぁと』
 おたのしみに!

[ 2015/12/20 16:46 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(2)
プロフィール

オノユリス!

Author:オノユリス!
1993年10月11日生まれ。
性別は男です。

 実家の静岡県浜松市で暮らしつつ、時には学業に、時にはメイプルに専念しております。

 皆さんに楽しく読んでいただけるような、メイプルブログを目指します!



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