これは私の日記帳であり、箱庭であり――そして、帰る場所である。

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第八話『俺のパソコンもたまに勝手にリブートする』

   
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 1.異なる世界は混じり合う

 メイプルストーリーには、複数の『並行世界』が存在する。
 例えばそれは『かえで』ワールドと呼ばれるものであったり、あるいは『さくら』ワールドと呼ばれていたりするものだ。
 それらは【メイプルワールド】とキネシスの生まれた【パラレルワールド】のように、互いの因果律が影響を及ぼし合う事も無く、同じ時間、同じ場所だというのに、異なる運命を辿っている。
 不思議な事に、文化にも僅かなずれがあり、その違いを探すのも楽しみ方の一つかもしれない。


 ――さて、時は4月20日。美しく咲き乱れる桜がやがて儚く散り始めた頃。
 それまで五つ存在していた並行世界が三つに統合され、融け合った。

 『ゆかり』ワールドと『あずさ』ワールドの二つが合わさり、新たな『ゆかり』ワールドに。
 そして『かえで』ワールドと『さくら』ワールドが合わさり、新たな『かえで』ワールドに。

 メイプルワールドでも、桜の花は散っていった。
 褪せた世界に彩りを与えるべく、最後の役割を背負って散った。


 心機一転というべきか、世界中が新たに生まれた『交点』に盛り上がりを見せる。
 あるいは武陵の道場や北の海の果てにある【海底の塔】シードなどといった要所の戦況は、激化していった。


 その頃、多くのモンスターがドロップしたのが、この『思い出の欠片』というアイテムである。

 071001.png
 電流を帯びた角砂糖のようなこのアイテム。きっと溢れんばかりの思い出のエネルギーが詰まっているのだろう。

 それを200個集める事で、かえでワールドか旧さくらワールドの象徴を模った椅子と交換してもらう事が出来た。

 071002.png
 (今回のイベントも達成が期限ギリギリだったのは内緒である)

 
 もちろんルナはかえでワールドの住人なので、かえでの椅子と交換してもらった。
 かつて分散した世界が存在した事を、忘れないよう願いを込めて。

 世界は収束しつつある。誰もがそう思っていたこの時、他とは異質なる新たな世界が生まれようとしている事に、気づける者は一人として居なかっただろう。



 2.そしてまた芽生える世界


 ……。
 …………。

 ――ここは、どこだ……。
 ――微かな揺れを感じる。まるで空を飛んでいるかのような。

「ファントム様、あと五分程で【エレヴ】上空へと到着いたします」
「……わかった。うーん、ちょっと緊張するな」

 ――ファントムって誰だ? 目の前に居る執事のような恰好をした男は?
 ――……なぜ自分は、勝手に喋っている?

 朧げな意識は頭が張り裂けそうな不快感を伴う混乱と共に閉じていく。
 彼がメイプルワールドの英雄『ファントム』として転生し、この世界に降り立った事に気付くのは、シグナス率いる騎士団をヒルラからの侵攻から救った後の事である。




 誰もが新たに生まれた未知を求め、活気に満ちた眼差しで旅をする。
 ここはルナ達が生きる『かえで』ワールドとは似て非なる場所。並行世界が統合し少し経った後に誕生した、産声を上げたばかりの世界である。

「誰かー、魂の書を買い取りませんかー」
「……どうやって買い取るんだよ」
「あ……そういえばそうだったwww」


 街中からそんな会話が聞こえてくる。
 決して人々が貧困に苛まれている訳ではない。むしろ狩りで得られる収入はルナ達の生きる世界とは比にならぬ程多いだろう。
 
 それが、この世界が異質と呼ばれる所以の一つ。
 
 ――この世界では冒険者同士での金銭、あるいは物の取引の一切を、禁じられている。

 己の力で金を稼ぎ、己の力で装備を強くしていく。
 かといって、決して一人の力で世界を制する事など不可能な、理不尽極まりなく、最高に刺激の強い世界。
 
 人々はその世界を、『リブート』と呼ぶ――。





 ファントムとして生まれた彼が憶えていたのは、『ハートキラー』という自身の名。
 そしてかつて自分は英雄と呼ばれる大層な存在ではなく、悪人であったという事だけだ。

 071003.png
 手の甲には、旅の途中で突如あらわれた稲妻の形をした蒼い傷痕。
 痛みこそないものの、あまりに気味が悪いので手から発する光の波導で普段はそれを隠している。


 はじめは新たな世界にうろたえていたものの、親切な人間が多くすぐに馴染む事が出来た。

 071004.png
 強大な敵が現れる事もあったが、数の前に敵うものなど居ない。

 ――自分は何の為にこの世界に生まれてきたんだろう。
 理由を探す長い旅路が、この日から始まったのだった。


 続く!

 
 


Ω < あ、そうそう。

Ω < これから毎週土曜日か日曜日にブログを更新するつもりなので見てください! 目指すは有言実行……。

Ω < どうでもいいけど、Aキーが壊れてて文章入力するのめっちゃ苦労した。

Ω < おかしいところあったら指摘してください。

続く!
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[ 2016/07/10 15:38 ] メイプルストーリー アップデート | TB(-) | CM(2)

第七話『夏休みの宿題は先に終わらせましょう』


   
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 2016年3月、某日。メイプルワールドに一匹の猫が降り立っていた。
 時には闇の組織のエージェント、そして時には何処からか現れた流浪の記者として活動するその猫は、この世界の〝調律者〟と呼ばれる存在である。
 少なくとも中の人は、〝調律者〟が現れてから、世界を取り巻く防衛機能が強化されている事に対し、些かの憤りを感じていた。
 ――そして〝調律者〟は、メイプルワールドの全ての住民に三つのミッションを依頼する……。

調律者
***********************************************

1.エリートモンスターを500匹倒せ。
2.エリートボスを100匹倒せ。
3.フィールドに現れるルーンを100回起動せよ。

***********************************************

 依頼の報酬である〝【称号】闇のオーラ破壊者〟は、多くのプレイヤーが羨むほどに強力なものである。
 30日間という効果持続期間が設けられているものの、自身の能力が上昇する事は間違いない。それまで、これほどまでに強力な称号は実装されていなかったからだ。
 
「拒否する」

 しかし、ルナはそう告げたのだった。
 その返答はあまりにも淡々としていた。それどころか、許可、拒否の選択をしたのかすら怪しい。会話の途中でエスケープしたのではないか疑ってしまうほどに静かに会話は終わったのだ。

「そもそも、効果が30日しか持続しないとかふざけているのか? それなら少し弱くても以前死ぬ思いをしながら取得した〝【称号】ピン我一体〟で充分だ」

 加えて、ルナファミリーの動力源である〝中の人〟の精神力は酷く憔悴していた。
 現実世界において〝就職活動〟と呼ばれる戦争に巻き込まれ、攻撃は空振り、徒労に終わるばかりの戦い。ほとほとくたびれかけていたのは、言うまでもない。

 ――結局、今回のイベントも静かに過ごす事になりそうだな……。

 ルナは心の何処かでそう呟きながら、のんびりとこの世界で日常を過ごす――。


    *


 そして月日は過ぎて、4月18日。イベント終了の二日前。

「ごめんやっぱエリボス倒すわ」

 何が原因か分からないが、刃神ルナの死闘が幕を開けた……。
 唐突にやる気が満ち溢れたのだ。これは伏線でもなんでもなく、ただ、単純に。
 依頼を遂行していないとはいえ受諾だけはしておいたのが幸いし、狩りの合間に現れたエリートボスを撃破していた刃神ルナは、既に30匹のそれを討伐していた。
 残り、約70匹――それを2日間で終わらせるのは、さすがの刃神であれども容易くはない。
 ――だが……いけるッ!
 そんな根拠のない確信を胸に、ルナは狩場を駆けだした。

 そしてややあって。何匹かエリボスを倒したのち。

「あ、やっぱこれ無理だわ」

 一時的に世界を取り巻く闇の気が増加しているのか、普段より早くエリートボスと邂逅する事が出来たものの、このペースでは間に合わない。
 諦めるしか、ないのか……。
 そう思った矢先、この世界のキャッチコピーを思い出す。

『育てて、喋って、協力して、冒険する! っぷる~』

 今となっては真っ黒な嘘に過ぎないこのキャッチコピー。しかし切羽詰まったこの状況、一度信じてみるしかない。

「みんな、オラにエリートボスを分けてくれ!!!!」


 というと、少し恥ずかしいので、拡声器やフレンドチャットを使いつつ協力者を募る。
エリボ1

 結構集まった!
 いけるッ! これならいけるぞ!

042502.png


 ほとんどの人間が既にクエストを完了している中、集まってくれた。付け焼刃の絆とはいえ、多くの人間の力が一つとなった日であった。

042503.png
 時には他のパーティと衝突しつつも……。

残り1匹!
 少しずつ、少しずつその討伐数を増やしていき……。

 そして、とうとう――

042001.png
 いっけえええええええええええ!


 終わったああああああ!!!
 ありがとォーーーーーッ! くろのーーーーーッ!!!! ありがとーッ!!!(GANTZ的なノリ)
042505.png
 

 手伝ってくれた人ありがとーーッ!

042002.png


「ふう……これが友情――私達は協力する事を、強いられてるんだ!」

042003.png


 これ期限30日じゃねえか。クソゲーだな。

 


 
[ 2016/04/25 12:28 ] メイプルストーリー アップデート | TB(-) | CM(0)

第六話『この中に一人女王がいる!』

  
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* 王宮の侍従 *

「先ほどのメイド長の失礼な態度、お詫びします。王女様の面倒をみながら王宮のほかの方々の面倒も見なければならないのでメイド長も大変だと思います」

 王宮の侍従をしていたと言うイアンは、深々と頭を下げながら謝罪した。若くして洗練されたその礼儀に、それまで苛立ちを覚えていたルナ達は馬鹿馬鹿しくなって恐縮してしまう。

「……私達は王女に謁見して、城が浮かび上がる当初の事を尋ねたかっただけだ。それがこれほどまでに除け者にされるとはな……」
「ええ。今の状況が続けば、ルナ様達は恐らく一生王女様には会えないでしょう。そこで、いい事を思いついたのですが、試してみないですか?」

 イアンから発せられた「王女様には会えない」という言葉にルナ達は違和感を覚えた。交流こそしていないものの、王女には既に会っている。
 だけどそれは、言葉のあやだろうという事で片付けてしまった。

「市場にいるクリプ兄さんが売っている高級ハンカチを“王女様に捧げる献上品”だと言ってメイド長に渡してください。そうすればきっと席をはずしますから。その隙にルナ様は王女様に会ってお話をするのです」
「そんなうまくいくものか……? それ」
「物は試しだ。やってみるしかあるまい」

 ルナ達は藁にもすがる思いで市場へと向かった。
 〈クリティアス〉の市場にも、現在のメイプルワールドと同じようにさまざまな武器、防具が売られている。別に大した品が売っているようには思えなかったが。

「お前がクリプか?」
「おう、いらっしゃい」
「高級ハンカチをくれ」
「へぇー、お客さん旅の人か。結構な金を持ってるようだな?」
「……いくら払えばいい」

 クリプは悪い商売人の顔をする。高級と名のつくくらいなんだから、ルナ達もそれなりの額は覚悟していた。

「へっ……10万だ。どうす――」
「買う。ありがとう」
「…………ま、まいど」

 ルナのポケットマネーは860万――大した額ではない。そもそもモンスターを倒せれば一匹あたり1000メルほど手に入るのだから。どんなに貧乏な冒険者だとしても10万の商品を買う事など容易い。
 そもそも、メイプルワールドの住民達は随分と呑気な商売をしている。安定しすぎている――とも言える。冒険者間の物価はインフレーションの道を辿る一方だ。
 ただの真っ白な書物を一枚やりとりするだけで、少なくとも2000万もの大金が動くのだ。真っ白である。そこらへんの自由帳と同じだ。
 どこぞの海底都市では買った剣の値段が売却値よりも安いという事があった。魚介類に商売させるからこうなるのだ。呑気を通り越してバカである。

「これが高級ハンカチか……。確かになんか青く光ってるし高級っぽいな」
「刺繍に魔法が込められてるようですのね。確かに持ってれば身にかかる危機は防げそうですの」
「ほう、便利だな。――それで、これをあの召し使いに渡せばいいのか」

 ルナ達は旅館に戻った。根拠のない期待から、どことなく歩く速度が早くなっていた。

「おい。召し使いはいるか」
「何かご用ですか? 申し訳ないですが王女様の謁見を許可できないことに変わりはありませんよ」
「おうじょさまにさしあげるけんじょうひんをもってきました(棒読み)」
「こ、これは……! 災いを防ぐ魔法の刺繍が施されたハンカチですわね。感謝いたします。これこそまさに王女様に必要なものです。一刻も早く王女様にお渡しします」

 そういうと、召し使いは急ぎ足で旅館の外に出て行った。
 王女様は目の前にいるというのに、どういう事だ……?
 しかしこれは、王女と接するまたとないチャンスだ。ルナは王女に近づき、声をかける。

「お前が〈クリティアス〉の王女、ミリアムか。少し話がしたい。拒否権はない、わかったか」
「ちょ、ちょっとルナ! 一応王女様ですのよ! そんな最終的にやられそうな悪の組織の中ボスみたいな話し方やめなさいですの!」
「あ、あなた方がパルマとお話しているのは何度も見ました……。ですが、申し訳ないですが……本当に私は何も知らないんです……」
「めっちゃ怯えてるじゃないですの! 謝るですの!」
「うっ、す、すまない……」

 しかし、ミリアム王女の怯え方は普通ではなかった。
 そしてぽろぽろと涙を溢し始めた。

「ううぅ……、突然城から逃げなければならない状況も怖かったのに……。お父様から頂いた大切なクシまで失くしてしまって……毎日が不安で仕方ありません……」
「クシ……?」
「そ、そうです! 本当に申し訳ありませんが……ルナさん、よろしければ私が失くしたクシを探してきてくれませんか……? それがあれば心が落ち着くと思うんです……」
「それは随分と難易度の高い依頼だな……。森の中にいる数多くのモンスターの中から一つのクシを見つけろというのか……」
「はい……。モンスターの手に渡っているとすれば、もう私にはどうする事も出来ないので……ぐすん……」
「あーもう、わかった。探してくるよ……」


 ***

 森の中で燃え上がる武器の亡霊達を、ルナはただひたすらに斬り伏せる。
 その時、一匹の亡霊が古めかしい木のクシを落とした。

「ん? これかな。なんでこれを亡霊が持ってんだよ……」

 野暮である。
 ルナ達は王女の元へ戻った。

「私の木のクシを本当に持ってきたんですか? ありがとうございます! 高いものではないですが……私にとってはただ一つの宝物なんです……」
「よかったですのね!」
「…………」

 王女はほっとした様子こそ見せたものの、未だ浮かない顔をしている。
 避難生活でそれほど疲弊しているのだろうか。大事をとってルナ達は一度撤収しようとした。その時、王女の表情に何か決意のようなものが揺らめき始める。

「……恩人であるルナ様方に、これ以上嘘を吐くわけにはいきませんね」
「何?」
「本当のことを申しますと、私は本物の王女ではありません」
「……なんだと?」

 パルマの不可解な行動から何となくそんな気はしていたものの、予感が事実となるならば、それは驚愕という波となって押し寄せる。

「あの日――国王陛下がお姿を消した理由を未だ私達は知りません。それで残された王女様を護るため、しがないメイドだった私が王女様のふりをしていたんです。……見ての通り、私が上手に王女様のふりが出来なくて、パルマ様は焦っていらっしゃいます」
「ま、待て。そうすると、本物の王女は今どこで何をしているんだ」
「……私達と一緒に逃げて身を隠しています。いくら恩人とはいえ、あの方の場所をお教えするわけにはいきません。……そろそろパルマ様がお戻りになります。お話はここまでです」
「そんな……」
「心優しい旅の方。私からお話することはもう出来ませんが……あなた達は信頼できます。この〈クリティアス〉を……そして可哀想な王女様を、どうか助けてください……!」

 ミリアムは本当の王女を護るための偽の王女。そして本物の王女は他に存在する。
 しかしミリアムは「王女は一緒に避難している」と言っていた。こんな落ち着かない状況じゃ遠くまで逃げるのは無理がある。

「……王女は間違いなく、この近くにいる」
「ええ……でも私達は王女様の情報を何一つ持っていないですのよ。“王女”なのだから、性別は女、ということくらいしか……」
「ミリアムは既に王女じゃないと言っているし、それを覗けば私達が出会った女性は……四人か。仕方ない、手探りになるけど彼女達に声を掛けてみよう」


 ――容疑者1.未だデレを見せないメイド長・パルマ


「おい、召し使い」
「なんですか? 私はあなたに仕えているわけでもないのに、馴れ馴れしい……」

 声を掛けたはいいが、この老婆が女王……? そんな夢のない話あってたまるか。
 とはいったものの、現実は非情である事が多い。違いますようにと天に祈りながら、ルナは尋ねた。

「単刀直入に言う。本物の王女はどこだ?」
「はい? 本物の王女様ですって? どこでそんな話を聞いたんですか? 全く意味がわかりませんね」

 一つの問いに対し、四つの反撃をしかけてくるとは、さすがメイド長。あなどれない。
 あくまでしらを切るつもりだと察し、ルナも直球で攻めることにした。

「お前は女王か?」
「冗談でもそんなことを軽々しく口にするのはおやめなさい。一介のメイド長でしかない私と女王様とを一緒にするなんて……話になりません!」
「そうか。まぁそうだよな」

 なぜかルナ達は安堵の息を漏らしていた。

「……しかし、今のお話で〈クリティアス〉に降りかかった災いの恐ろしさを実感しました。外の世界の方々が、王女様のことも、私達のことも全て忘れ去ってしまった時代に生きているという事を……。〈クリティアス〉は一体これからどうなるんでしょうか……」



 ――容疑者2.ペットのフクロウといつも一緒! 武器商人のニタ

「私と翁加は森でモンスターを相手にしていることが多かったから、武器商人のことについては殆ど知らないんだが……」
「私に任せるですの。街中では私の方が魔法使いってこともあって親しみやすいですの」

 斧百合はニタの居る方に向かっていった。

「いらっしゃいませぇ。あら? 斧百合ちゃん」
「ごめんなさいですの。今回は買い物じゃなくて、尋ねたいことがあって……」
「尋ねたいこと、ですかぁ? ……あら? そちらの方は?」

 斧百合の背後にいたルナに、ニタが気づく。

「あー、こいつは刃神ルナですの。私の旅の仲間ですのよ」
「そうなんですかぁ! はじめまして!」

 そう言ってニタはルナに向けて煌びやかな笑顔を見せた。まぶしい!

「よ、よろしく……。ところで、消えた王女について何か知らないか?」
「王女様ですかぁ? 旅館のほうに避難しているという事は存じてますよぉ。でもごめんなさい……店のお仕事が忙しくって、直接お会いしたことはないんです……」
「そうか……変なことを聞くが、あなたが女王様本人なのではないか?」

 ルナも自分で不自然な問いかけだとは分かっていたけれども、こうするしかなかった。一人ずつ、虱潰しに探していくしかないのである。
 しかしニタは顔を真っ赤に染めて否定した。

「へ、わ、私が女王様? そ、そそ、そんな! 私は一介の武器屋の店員に過ぎませんよ! それに私のお父さんは、王様ではなく南東で警備をしているドストフという兵士ですよぉ」
「ま、マジで……」

 それもそれで、衝撃の事実ではある。あんなむさ苦しいおっさんからこんな可憐な少女が生まれるなんて……信じられない。

「も、もうっ! びっくりさせないでくださいよぉ。面白い発想ではありますけど……そういう冗談はもう少し仲良くなってから……ね?」
「あ、ああ……。悪かった」
「王女様ってどんな方なんでしょうねぇ? きっととっても綺麗なんだろうなぁ――」

 結論から言えば、ニタは王女ではなかった。
 だがそのまぶしい笑顔が、調査に疲弊していたルナ達を癒したのもまた事実。

「……もうあの子が王女様でいいんじゃないかな……」

 そんな呟きは明けない夜空に溶けていくだけである。


 ――容疑者3.魔法の解析ならお任せあれ☆女教師・ベアトリーチェ

「あら、ルナ様方ではありませんか。お久しぶりです」
「…………」
「どうかされましたか?」
「……ないな」
「い、いや念のため聞くですの!」
「いやだ! 例え母国ではないとしても! こんな女性が王女様だなんて信じたくないッ!」
「私が王女……? 面白い冗談を言いますね。ですが“ヘカトン陛下”の一人娘である王女様がこんなおばさんなわけないでしょ?」

 それな。

「あなた方がなぜ消えた王女様の行方を捜しているのかわかりませんし、そもそも消えた理由すら不明な現状、あなた方に何らかの助言をするのはやめておきます。あなた方を信頼していないわけではありません。ただ単に、無責任な言葉で他者を翻弄したくないのです」
「ああ……。変なことを聞いてすまなかった」

 ベアトリーチェは高度な魔法を扱う大学の教師なだけあってよく出来た人間である。
 今のルナには魔術は使えない。しかしこれがもしその才覚に目覚めていたとしたならば、彼女に師事していただろう。


 ――容疑者4.いたずら魔法少女☆ビアンカ

 ビアンカは魔法大学の生徒だ。その性格はどこかルナに似たものがあり、それは彼女自身自覚していたことである。
 ゆえに、声を掛けるのに手間は掛からなかった。

「ビアンカ」
「あらルナじゃない。久しぶり」
「突然で悪いんだが、消えた王女について教えて欲しい」
「王女様? え、消えたの? じゃあ今はいないんだ」
「そこからか! ……いや、違うな。もしかしてお前が王女本人なんじゃないか? いや、そうだろう!」
「唐突にあふれ出すその自信は一体どこからきたんですの……」
「私が王女? そんなわけないでしょ。王女として生きるとか、そんなつまんない人生なんて考えただけでゾッとするわ。絶対に嫌よ」
「……そういう考え方もあるのか」

 ***
 
 結局、容疑者として尋ねた女性陣は皆王女である事を否定した。本当の女王が誰なのか、未だ確信は持てないまま、ルナ達は街中で途方にくれていた。

「結局調査も行き止まり……。誰か救いの手を差し伸べてくれる人はいないのですの……?」
「いや……一つだけ分かったことがある」
「え……なんですの?」
「この事件が迷宮入りだという事だ!」


 続く!!




 尺の関係で打ち切りました。
 次回! 第七話『ドキドキっ! 王女様は男の娘!? 閉ざされた王国で巻き起こる禁断の情事(はぁと』
 おたのしみに!

[ 2015/12/20 16:46 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(2)

第五話「詐欺に掛かる吊り橋」


  
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* 王宮の生き残り *

 ルナ達は〈クリティアス〉に戻り、ナインハートから預かった書物をヒレルに渡した。

「待っていました! これが〈クリティアス〉の失った空白の時間!」
「〈クリティアス〉に関しての情報は殆ど消失してしまっているらしい……」
「なるほど……しかしこれで大体の状況は把握することが出来ます。しかし問題は、あの空に浮かぶ王宮です。我が王国は魔法の伝統が長く続いていますが……それでもあんな魔法は見たことがない。第一、目的もはっきりしない」

 王国の中心の空から、不気味に顔を出す逆さまの城。ヒレルはそれを眺めながら溜息を漏らす。

「せめて当時の状況が分かればいいのですのに……」
「……実は、王宮にいた方達は現在街の市場に避難しているのです。彼らを訪ねれば城が空に浮かんだ当時の状況について話を聞けるかもしれません」

 ヒレルはもどかしそうにそう告げた。城がこんな惨事になれば、まず責められるのは王宮にいた者達だ。だからその事はずっと隠すつもりでいたのだ。
 しかし時間を超えたという前代未聞の災害に直面し、渋々真実を明かす事にした。

「……なるほど。行こう、市場に」
「王宮の方達のいる市場は王国の北にございます。王族達は宿に集まっているはずです。その中には……王女様もいますので……。どうか、内密に……」
「わかっている」

 ルナ達は北の市場へすぐに向かった。
 宿の看板は目立つところにあり、扉に向かって進もうとした瞬間。

「……おい、ルナよ」
「ああ……。わかってる」

 翁加とルナは、何者かに監視されている事にすぐに気づいた。
 殺意はないようだが、その者がルナ達をよく思っていないことは、背筋を走る寒気から容易に察することが出来る。

「……誰かがこっちを見ていますね」

 それまで無口でいたノームサーナが、この時言葉を発した。

「お前、よく気づいたな……」
「…………」

 しかしそれ以降、再びノームは無口になった。
 ノームも翁加と同じ――いや、それよりも早くにその存在に気づいていたのだ。
 この研ぎ澄まされた感覚は、ビーストテイマーに就職したためのものなのだろう。ルナはその時、そう“勘違い”をしていた。

「とりあえず、街中で争いを起こす気はないようだし。このまま宿に入ろう」

 ルナ達は宿屋に入る。一階のフロントに、王族と思わしき集団が見受けられたが、声を掛ける前に受付の女に捕まってしまった。

「申し訳ありません。当店は現在満席でして……」
「いや、私達は客として来たのではない。そこにいる者達と話をしたくてな」

 ルナがそういうと、派手な服を着た少女は心底不安げな表情を彼女に向ける。
 元々良い暮らしをしていたからか、どこか居心地が悪そうだ。

「……! だ、誰ですか? わ、わたしは何も知りません!」
「いや、私達は――」
「お待ちを。どなたかは存じませんが、王女様にむやみに近づくのはおやめください」

 そういってルナ達を制止したのは、召し使いの格好をした老婆だった。

「王女様は避難生活で大変疲れていらっしゃいます。用件があるのならば正式に謁見を要請してもらえないかしら」
「え、謁見要請だと……?」
「そうです。普段ならば王宮官吏たちの複雑な手続きを経て許可が下りるのが王族の謁見――ですが、城があんな風になり避難生活を余儀なくされている現状、そんなことを望むのは無理があります。それに急に城を離れなければならない状況で物資も不足して……。あっ、そうだわ」

 召し使いの老婆は何かをひらめいたようで、他の者と同じような眼差しをルナ達に向けた。 この時点で、嫌な予感しかしなかった……というより、これはもう確定事項。逃れられない運命《カルマ》――。

「今申しましたように、私達は急いで城から逃げてきました。そのおかげで今私達はとっても大変な状況に置かれているの。……そこで。もし、あなた達がこの困難な状況を助けてくださるのなら、王女様との謁見を考えて見ますけど。どうでしょう?」
「……何をすればいい」
「ふふ、ありがとうございます。森にいる堕落した中級魔法使いを倒して、衣の切れ端を150個ほど集めてきてください」

 150個とはつまり、750個である。150 = 750;
 翁加の脳内コンパイラはエラーを吐き続けていた。

「ヴァア……」

 翁加のデスボイスと共に、召し使いのお使いが始まった。

「クソ……こいつらはなんでモンスターになったんだ。元々は普通の魔法使いだったんじゃないのか?」

 森のはずれ、堕落した中級魔法使いが大量に出現する場所で、衣の切れ端を集めながらルナは愚痴を零す。
 結局、750個もの切れ端を集めてしまった。所要時間は20分ほど。結構単調な仕事である。

「ヴァ……」
「あの召し使い……絶対人遣い荒いだろ……。これだけで謁見させてくれるとは到底思えん」
「ヴァア……」

 ルナ達も度重なる“お使いイベント”に苛立ちを覚え始めていた。
 そもそもこんな布切れを何に使うんだよ。なんでわざわざ堕落した魔法使いから取るんだよ。明らかやばそうだろ。他にもっと調達ルートあったはずだろ。バカかよ。


 ***
 

「……もってきたぞ」
「感謝いたします。これで今必要な布地は用意出来たのですが……。思ったより時間がかかりませんでしたね……。これからどうすればいいかしら……」

 召し使いの老婆は何か思い悩んでいる様子だった。
 次は何を頼もうかと考えている者とは少し違って、何かに焦っているような雰囲気がある。

「おい、どうしたんだ」
「……仕方ありません。ルナ様、申し訳ありませんが布地だけでは足りません。壊れた柄(赤)を150個集めてきてくださいますか?」
「は? 謁見を許可してくれるんじゃなかったのか!」
「思ったよりルナ様達が早く戻ってきてしまって……いえ、なんでもありません。王女様にお会いするためにはそれだけの真意を証明しなければなりません。ですので、頼んだものを持ってきていただけないのであれば、謁見は許可できません。どうしますか?」
「……わかったよ。すぐに集めてくるから待っていろ」
「ヴァアアアアアアアアアア!」

 その時突然、翁加がこれまでにないほどの大音量でデスボイスを発する。
 その場にいた多くの者が驚き、それに目をやった。

「おい、翁加! どうしたんだ! 今日のお前、いつにも増してやばいぞ!」
「ヴァアア……! ヴァアアアア!」
「や、やっぱり……」

 斧百合が、何か心当たりがある様子で慌てふためいている。

「何か知ってるのか? どうなってるんだこいつは! 頭大丈夫か!」
「じ、実は……――。翁加は、精神にあまりにもストレスが蓄積されると、デスボイスで発散してしまう癖があるですの……!」
「ヴァアアアア……!」

 Ω ΩΩ< な、なんだってー!

「い、一体どうすれば元に戻るんだ!」
「わ、私にもわかんないですの! 以前こうなったときは、弱いモンスター相手にひたすら無双させてたら元に戻ったんですの……」
「うわあ……」

 この場には翁加が余裕で処理できるほどの弱いモンスターはいない。

「ヴァア!」
「……コレ、正気は保っているのか?」
「た、たぶん……ですの。おーい、翁加」
「ヴァ!」

 返事はするようだ。ただ、目は大きく見開き、口から小さい舌を変な方向に曲げながら突き出しているその姿は、決して公衆の面前に晒して良いものではない。
 しかし、そう言っていられる状況でもなかった。

「うーん……。頼みごとはさっさと終わらせたいし、やむをえん。しばらくこの状態で先に進もう。……万が一の時があったら、その時は斬り伏せる――」
「ヴァァ……」

 かくして、ルナ達は頼まれたものを集めるために森へ向かった。

「750個って結構大変なイメージあるけど、意外と慣れてきたな」
「ブッチッパッドゥドゥヴァアアアアアアアアア!!!」

 翁加の症状は悪化していた。ルナはそれを憐れみに満ちた眼差しで見ることしか出来なかった。

「よし、集まったな! もどろう!」
「Inside, the cracked cold worrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrld !!!」
「お、おい翁加……落ち着けって」
「you see that fire burns your mind !!!!!!!!」
「gonna take off」
「okay」

 こうして宿屋に戻ってきたルナは、依頼されたものを召し使いに渡した。

「感謝いたします。しかしどうしたものでしょうか……」
「まだ何かあるのか……?」
「fu** the angels of grave ! vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaar!」

 翁加の惨状を見て、斧百合たちは茫然とするしかなかった。
 果たして目の前に居るのは本当に陰陽師なのか。根本的な疑問が彼女達の脳裏に浮かび上がる。

「で、これで謁見は許可してくれるか?」
「……王女様はお疲れのようで、今日は謁見を許可する事は出来ません。また後日にしてくださらないかしら」
「いい加減にしろ! 二度も頼まれたものを持ってきたじゃないか!」
「仕方ないでしょう。まさか、精神的にも疲弊している王女様をこれ以上苦しめるおつもりですか? お帰りください」
「ふざけるな……」
「何度も頼みを聞いてくださり感謝しています。あなたにクリティアス王家の御加護がありますように」

 結局、王女との謁見は許可されることがなく、調査の雲行きが怪しいまま宿屋を後にすることになってしまった。
 淡々とした召し使いの物言いを思い返すたび、良心は怒りで煮えたぎる。ルナだけでなく全ての者がそんな状態になっていた。

「クソッ! こんな宿屋私の剣戟を持ってすれば一瞬で粉々に出来るんだぞ!」
「落ち着くですの、ルナ……。ここで敵対する行動を起こせば、調査どころの話ではなくなってしまいますですの……」
「ぐ……」
「あのー。ちょっといいですか?」

 その時、背後からローブを被った少年に声を掛けられた。

「……なんだお前は。私は今機嫌が悪いんだ。余計な事を言ったら斬るぞ」
「す、すみません。ボクはイアン。王宮の侍従職を勤めています。さっきのメイド長とのやり取りを聞いていまして……。ボクにいい考えがあるんです。少しいいですか?」
「なんだって……?」

 現れた少年は、ルナ達にニッコリとした笑いを向けた。


 続く!!





 ストーリーをまとめつつ、時には矛盾点を当たり障りのないように改変しつつ。
 それに加えて5キャラ同時進行での前提。
 メッチャツライ。しかも第三者視点で書く小説はまったくもって慣れていない。
 個人的にはかなり書きにくい。どうしても心理描写が曖昧になってしまう。

 ちなみに中の人は連休に入った。バイトもしてないので暇である。が、この暇な時間を有効利用したいところ。
 もうすぐシュウカツ!が始まるので。色々な企業を調べないとね。
[ 2015/12/19 18:54 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(0)

第四話「時空を超えて、お届けします!」


  
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* 何となく魔法少女っぽい *

 ルナ達が魔法大学レンハイムの近辺を歩き回っていると、チェンと同じ色調の制服を着た少女を見つけた。栗色の前髪はきちんと揃えられ、凛々しい顔立ちをしており、チェンが言うようなだらけた性格の持ち主とは思えない雰囲気をまとっている。

「お前がビアンカか?」
「あら、あなた達は〈エレヴ〉から来たっていう……」

 どうやらビアンカは既にルナ達の情報を手に入れていたようだった。

「そうだ。私は刃神ルナ。訳あってメイプルワールドを旅している剣士だ」
「ちょうどよかったわ。コレを見て」
121801_item.png
 ビアンカが差し出した手には、青みを帯びた黒い石が乗っていた。ぼんやりと光を纏ったそれは、森の中で見た墓石のようなものや、街中のいたるところにある看板と似ている。

「それは……?」
「これは反魔力を凝集した反魔力石のかけらというモノよ。外のモンスターが落としたのを見たことないかしら? そしてこれ、反魔力凝集機――またの名を、I.M.S(Imaginary Magic Suspender)。これを持ってすれば、この鉱石から反魔力を集められるの」
「反魔力……? 初めて聞く言葉ですのね……。それが、この街の動力源なのですの?」
「うん。原理は難しくて私にも説明は出来ないけど、ここ〈クリティアス〉にはその反魔力を利用した魔法道具がたくさんあるの。――今、私が作ろうとしている武器も含めてね」

 ビアンカは手に持ったおもちゃの木の剣を軽く振りながらそう言った。その瞳から僅かに発せられる怒りに、ルナは気づいていた。

「で、ここからが本題なんだけど。郊外の森にいる赤く燃え上がったモンスターを退治して、この反魔力を集めてきて欲しいの!」
「……ああ。了解だ」
「ありがとう! 本当は私も自分の力でやりたいんだけどね……。ドストフおじさんに絶対に街の外に出るなって言われてるから……本当にひどいよ」

 ルナ達は反魔力を集めに街の外へと向かう。

「今回も物資集めだ。行こう、翁加」
「心得た」

 そして東側の森に行くと、禍々しい炎を放ちながら蠢く剣の姿があった。
 今回の標的である。ルナは軽々しく跳躍し、浮遊する剣に斬りかかった。

「今回の敵もたいしたこと無いな。さっさと集めよう」

 そう言いながら、ドロップした反魔力石を拾う。
 しかし、そこである違和感に気がついた。

「ん? どうした、ルナよ」
「ない……だと……?」
「何がじゃ?」
「拾ったはずのアイテムがない」
「な……」

 まさか、と思いビアンカから受け取った反魔力凝集機を展開する。

『チャージされた反魔力は 16 です』
「凝集機がしゃべった! ……ってそうじゃない! これまさか、アイテム自体の移動が出来ないのか! だとしたら全員をこの場に集めなければならないじゃないか!」
「ヴァ……」
「一旦戻ってフラネーヴェ達と合流しよう……。相当面倒なことになった」

 そして十数分経って、ようやく彼女達は森に集合することが出来た。

「この凝集機にそんなクソシステムがあったなんて……」
「でも、荷物を圧迫しなくなるしその点を考えればいいんじゃないですの? それに我々の目的はこんなヘンテコな石っころじゃないですのよ」
「う、まぁそうか……」
「とにかく、私がある程度殲滅したら、斧百合は〈マジックシェル〉を掛けてくれ。そして一人ずつ一気に回収。これでいこう」
「了解ですの!」
「ヴァ……」
「え……今のは?」

 この時になって、ようやく斧百合が翁加の異変に気づく。翁加は時折低い声でうなり声を上げるのだ。

「なんかヘヴィメタルにはまっているらしい」
「そ、そうですのね……」

 翁加本人がそういったのだから、そう信じるしかなかった。
 それに言われてみれば「ヴァ……」ってなんとなくデスボイスっぽい感じがしなくもない。
 しかし斧百合は、どことなくそわそわとし始めたのである。

「まさか……ですの」
「なにがだ?」
「いや、なんでもないですの。さっさと集めましょう」

 ルナ達は割りを食う依頼に悪戦苦闘しながらも、なんとか1人300ポイントに及ぶ反魔力を集めきった。

「みんな無事か?」
「ふぅ……さすが斧百合だ。魔法障壁のおかげで全く怪我しなかったぜ」
「それほどでもある、ですの!」
「さて、戻るか」
 ※この時ノームサーナ君は4回くらいやられました。

 ***

「持ってきてくれたのね! えへへ、必要な反魔力は揃ったから、その凝集機はあげるよ! さーてと、どんな武器を作ろうかなぁ」
「ところで、私達は〈クリティアス〉について調査しているんだ。何か知っていることがあったら教えて欲しい」
「この王国について? うーん、ごめん! あたし歴史の授業中はいつも居眠りしてたから何も知らないわ。歴史について知りたいなら官庁の書記をしているヒレルおじさんに会ってみればいいかも。たくさんのことを知っていると思うわ」
「そうか、ありがとう」
「官庁は街の西にあるわ。学校も図書館も閉鎖されちゃって、気を落としてるみたい」


 結局、ビアンカからも有用な情報を得ることは出来なかった。チェンと比べれば数倍まともな性格をしていたのでそこまで怒るほどの事でもなかったが、調査の行く末は暗雲に包まれたままである。
 ルナ達はヒレルという人物に会うために西に歩き出す。


* 抜け落ちた歴史 *

 〈クリティアス・官庁〉――街の西側には魔法大学ほどの大きさの建造物があり、建物の前に立てられた掲示板には王国民に向けられさまざまな情報が掲示されているようだ。
 そこでルナ達はヒレルと出会った。鼠色のひげと鼻毛がつながっており、フラネーヴェは出会いがしらに噴出し、今も必死に笑いを堪えている。
  121802_person.png


「こんな時に〈クリティアス〉を訪れるとは……。それで、一体何のご用でしょうか?」
「私達はこの国を調査している。これまで色々な人々とコンタクトを取ったが、この国の歴史と私達の知っている歴史とでは数百年以上の差異が生じている」

 それを聞いたヒレルは「ばかな……」と、驚き目を丸くしながら言った。

「……暗黒の魔法使いの攻撃を受けたとはいえ、まさかそんな事態になっていたとは……。想像が付きませんね……」

 それからルナ達はこれまでの経緯を加えながら、外の世界についての情報をヒレルに伝えた。ヒレルにとっては信じられない言葉の数々だったが、彼はその全てを真摯に受け止めていた。

「……ということで私達は今ここにいる」
「今でも信じられませんが……。確かにあなた方のいた時代はここよりも未来でしょう。……いや、暗黒の魔法使いの攻撃を受けたのは〈クリティアス〉ですから、“こちら側の時間が止まっていた”といったほうが正しいですな。問題なのは、我々が外の世界でどれだけの出来事が起きたのか、何一つ知らないということ。人々の記憶から〈クリティアス〉に関する情報が消えるくらいですから、相当長い年月が経っているのは間違いありませんが……」

 この人物、書記を務めるだけある――ルナは心の中でそう思った。にわかには信じられない事実に直面したうえで、自らの問題を並べ、解決への糸口を手探りではあるが探している。
 並大抵の人間では出来ないことだ。
 しばらく考えをめぐらし、何かを思いついたのかヒレルは口を開いた。

「ルナさん達にお願いがあります。これからわが国の歴史書を一冊お渡ししますので、これを〈エレヴ〉に届けていただけませんか? そしてこの歴史書から途絶えた部分――すなわち〈クリティアス〉の抜け落ちた歴史に関する資料を持ってきていただきたいのです」
「わかった。待っていろ」
「これをお使いください。この魔法玉を使えば、〈エレヴ〉や〈クリティアス〉に転移することが出来ます」
「へぇー。用意がいいじゃん」
「できるだけ急いで戻ってくる。それじゃ」

 ルナ達は魔法玉の光に包まれ、〈エレヴ〉へと飛び立った。


 ***


 まぶしい光が消え、目を開くと視界には豊かな自然が映る。〈エレヴ〉に転移したのだ。蒼穹には鳥達が舞い、どこからは川の水が流れる音が聞こえる。
 その島は、空に浮かぶとは思えぬほどの暖かさにみちていた。
 島の東にある騎士団の殿堂にルナ達は向かった。

「ナインハート、ちょっといいか」
「おや、ルナさんではないですか。王国の調査はどうでしょうか」

 ルナが声を掛けたのは〈エレヴ〉の宰相――女王の代わりに執務を代行している、いわば〈エレヴ〉の代表者だ。
 
「ああ。ここにはその件で来た。これを見て欲しい」
「これは……。歴史書? しかも数百年前の……! どうしてここまで状態が良い物をあなたが?」
「それは〈クリティアス〉で渡せと頼まれたものだ。代わりにこちら側の歴史書を持ってこいと頼まれている」

 ナインハートは手渡された〈クリティアス〉の歴史書を見て、心底驚いている様子だ。

「……暗黒の魔法使いに関しての記録は、殆どが残っていません。長い年月が経っているし、しかも戦時中にその多くが渦中に飲まれ、燃えてしまいましたからね。これは〈クリティアス〉に関しても同じです」
「うーん……そうか。そう伝えてくるよ」
「ただ――」
「……?」
「とある過去の記録に〈クリティアス〉かと推測出来る一文があります。そこには『暗黒の魔法使いに抵抗した見せしめとして、一夜で消えた王国があった』とだけ記されています」
「まさか……」
「そうです。表現が難しいですが……、今の〈クリティアス〉は、“現在の時間軸に存在する、過去の王国”ということです。過去を生きる人々が、未来について知りたがるのは当然のことでしょうね」

 過去の王国が、現在に転移した――?
 ルナは茫然とその事実を受け入れるしかなかった。

「これまで色々な経験をしてきましたが、まさか王国ごと時間を超越するとは……。本当に驚きました。ルナさん達は引き続き調査をお願いします。なぜ暗黒の魔法使いは〈クリティアス〉を攻めたのか? そして何故城が空に浮かび上がったのか? 突き止めるべき事はまだたくさんあるのですから」
「……ああ」

 一国の時間軸を歪ませる程の魔法使い。ルナ達が相手にしようとしている敵はあまりにも強大だった。
 それを実感したルナの頭に、ナインハートの言葉はしっかりと入ってこなかった。
 頭の中を冷たい鎖が蛇のように這い回っている感覚がして、ルナはすぐにそれを振り払った。


 続く!




※反魔力凝集機(I.M.S)の正称(Imaginary Magic Suspender)は適当に中の人が考えました。

 クリティアスの前提……長い。5キャラ同時進行で進める前提クエストが、ここまで大変だとは思いもよらなかった。
 まぁ、効率的なレベリングのためなので仕方がない。連休に入ったのでさっさと終わらせちゃいます。
[ 2015/12/18 21:47 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(0)
プロフィール

オノユリス!

Author:オノユリス!
1993年10月11日生まれ。
性別は男です。

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