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これは私の日記帳であり、箱庭であり――そして、帰る場所である。

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第六話『この中に一人女王がいる!』

  
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* 王宮の侍従 *

「先ほどのメイド長の失礼な態度、お詫びします。王女様の面倒をみながら王宮のほかの方々の面倒も見なければならないのでメイド長も大変だと思います」

 王宮の侍従をしていたと言うイアンは、深々と頭を下げながら謝罪した。若くして洗練されたその礼儀に、それまで苛立ちを覚えていたルナ達は馬鹿馬鹿しくなって恐縮してしまう。

「……私達は王女に謁見して、城が浮かび上がる当初の事を尋ねたかっただけだ。それがこれほどまでに除け者にされるとはな……」
「ええ。今の状況が続けば、ルナ様達は恐らく一生王女様には会えないでしょう。そこで、いい事を思いついたのですが、試してみないですか?」

 イアンから発せられた「王女様には会えない」という言葉にルナ達は違和感を覚えた。交流こそしていないものの、王女には既に会っている。
 だけどそれは、言葉のあやだろうという事で片付けてしまった。

「市場にいるクリプ兄さんが売っている高級ハンカチを“王女様に捧げる献上品”だと言ってメイド長に渡してください。そうすればきっと席をはずしますから。その隙にルナ様は王女様に会ってお話をするのです」
「そんなうまくいくものか……? それ」
「物は試しだ。やってみるしかあるまい」

 ルナ達は藁にもすがる思いで市場へと向かった。
 〈クリティアス〉の市場にも、現在のメイプルワールドと同じようにさまざまな武器、防具が売られている。別に大した品が売っているようには思えなかったが。

「お前がクリプか?」
「おう、いらっしゃい」
「高級ハンカチをくれ」
「へぇー、お客さん旅の人か。結構な金を持ってるようだな?」
「……いくら払えばいい」

 クリプは悪い商売人の顔をする。高級と名のつくくらいなんだから、ルナ達もそれなりの額は覚悟していた。

「へっ……10万だ。どうす――」
「買う。ありがとう」
「…………ま、まいど」

 ルナのポケットマネーは860万――大した額ではない。そもそもモンスターを倒せれば一匹あたり1000メルほど手に入るのだから。どんなに貧乏な冒険者だとしても10万の商品を買う事など容易い。
 そもそも、メイプルワールドの住民達は随分と呑気な商売をしている。安定しすぎている――とも言える。冒険者間の物価はインフレーションの道を辿る一方だ。
 ただの真っ白な書物を一枚やりとりするだけで、少なくとも2000万もの大金が動くのだ。真っ白である。そこらへんの自由帳と同じだ。
 どこぞの海底都市では買った剣の値段が売却値よりも安いという事があった。魚介類に商売させるからこうなるのだ。呑気を通り越してバカである。

「これが高級ハンカチか……。確かになんか青く光ってるし高級っぽいな」
「刺繍に魔法が込められてるようですのね。確かに持ってれば身にかかる危機は防げそうですの」
「ほう、便利だな。――それで、これをあの召し使いに渡せばいいのか」

 ルナ達は旅館に戻った。根拠のない期待から、どことなく歩く速度が早くなっていた。

「おい。召し使いはいるか」
「何かご用ですか? 申し訳ないですが王女様の謁見を許可できないことに変わりはありませんよ」
「おうじょさまにさしあげるけんじょうひんをもってきました(棒読み)」
「こ、これは……! 災いを防ぐ魔法の刺繍が施されたハンカチですわね。感謝いたします。これこそまさに王女様に必要なものです。一刻も早く王女様にお渡しします」

 そういうと、召し使いは急ぎ足で旅館の外に出て行った。
 王女様は目の前にいるというのに、どういう事だ……?
 しかしこれは、王女と接するまたとないチャンスだ。ルナは王女に近づき、声をかける。

「お前が〈クリティアス〉の王女、ミリアムか。少し話がしたい。拒否権はない、わかったか」
「ちょ、ちょっとルナ! 一応王女様ですのよ! そんな最終的にやられそうな悪の組織の中ボスみたいな話し方やめなさいですの!」
「あ、あなた方がパルマとお話しているのは何度も見ました……。ですが、申し訳ないですが……本当に私は何も知らないんです……」
「めっちゃ怯えてるじゃないですの! 謝るですの!」
「うっ、す、すまない……」

 しかし、ミリアム王女の怯え方は普通ではなかった。
 そしてぽろぽろと涙を溢し始めた。

「ううぅ……、突然城から逃げなければならない状況も怖かったのに……。お父様から頂いた大切なクシまで失くしてしまって……毎日が不安で仕方ありません……」
「クシ……?」
「そ、そうです! 本当に申し訳ありませんが……ルナさん、よろしければ私が失くしたクシを探してきてくれませんか……? それがあれば心が落ち着くと思うんです……」
「それは随分と難易度の高い依頼だな……。森の中にいる数多くのモンスターの中から一つのクシを見つけろというのか……」
「はい……。モンスターの手に渡っているとすれば、もう私にはどうする事も出来ないので……ぐすん……」
「あーもう、わかった。探してくるよ……」


 ***

 森の中で燃え上がる武器の亡霊達を、ルナはただひたすらに斬り伏せる。
 その時、一匹の亡霊が古めかしい木のクシを落とした。

「ん? これかな。なんでこれを亡霊が持ってんだよ……」

 野暮である。
 ルナ達は王女の元へ戻った。

「私の木のクシを本当に持ってきたんですか? ありがとうございます! 高いものではないですが……私にとってはただ一つの宝物なんです……」
「よかったですのね!」
「…………」

 王女はほっとした様子こそ見せたものの、未だ浮かない顔をしている。
 避難生活でそれほど疲弊しているのだろうか。大事をとってルナ達は一度撤収しようとした。その時、王女の表情に何か決意のようなものが揺らめき始める。

「……恩人であるルナ様方に、これ以上嘘を吐くわけにはいきませんね」
「何?」
「本当のことを申しますと、私は本物の王女ではありません」
「……なんだと?」

 パルマの不可解な行動から何となくそんな気はしていたものの、予感が事実となるならば、それは驚愕という波となって押し寄せる。

「あの日――国王陛下がお姿を消した理由を未だ私達は知りません。それで残された王女様を護るため、しがないメイドだった私が王女様のふりをしていたんです。……見ての通り、私が上手に王女様のふりが出来なくて、パルマ様は焦っていらっしゃいます」
「ま、待て。そうすると、本物の王女は今どこで何をしているんだ」
「……私達と一緒に逃げて身を隠しています。いくら恩人とはいえ、あの方の場所をお教えするわけにはいきません。……そろそろパルマ様がお戻りになります。お話はここまでです」
「そんな……」
「心優しい旅の方。私からお話することはもう出来ませんが……あなた達は信頼できます。この〈クリティアス〉を……そして可哀想な王女様を、どうか助けてください……!」

 ミリアムは本当の王女を護るための偽の王女。そして本物の王女は他に存在する。
 しかしミリアムは「王女は一緒に避難している」と言っていた。こんな落ち着かない状況じゃ遠くまで逃げるのは無理がある。

「……王女は間違いなく、この近くにいる」
「ええ……でも私達は王女様の情報を何一つ持っていないですのよ。“王女”なのだから、性別は女、ということくらいしか……」
「ミリアムは既に王女じゃないと言っているし、それを覗けば私達が出会った女性は……四人か。仕方ない、手探りになるけど彼女達に声を掛けてみよう」


 ――容疑者1.未だデレを見せないメイド長・パルマ


「おい、召し使い」
「なんですか? 私はあなたに仕えているわけでもないのに、馴れ馴れしい……」

 声を掛けたはいいが、この老婆が女王……? そんな夢のない話あってたまるか。
 とはいったものの、現実は非情である事が多い。違いますようにと天に祈りながら、ルナは尋ねた。

「単刀直入に言う。本物の王女はどこだ?」
「はい? 本物の王女様ですって? どこでそんな話を聞いたんですか? 全く意味がわかりませんね」

 一つの問いに対し、四つの反撃をしかけてくるとは、さすがメイド長。あなどれない。
 あくまでしらを切るつもりだと察し、ルナも直球で攻めることにした。

「お前は女王か?」
「冗談でもそんなことを軽々しく口にするのはおやめなさい。一介のメイド長でしかない私と女王様とを一緒にするなんて……話になりません!」
「そうか。まぁそうだよな」

 なぜかルナ達は安堵の息を漏らしていた。

「……しかし、今のお話で〈クリティアス〉に降りかかった災いの恐ろしさを実感しました。外の世界の方々が、王女様のことも、私達のことも全て忘れ去ってしまった時代に生きているという事を……。〈クリティアス〉は一体これからどうなるんでしょうか……」



 ――容疑者2.ペットのフクロウといつも一緒! 武器商人のニタ

「私と翁加は森でモンスターを相手にしていることが多かったから、武器商人のことについては殆ど知らないんだが……」
「私に任せるですの。街中では私の方が魔法使いってこともあって親しみやすいですの」

 斧百合はニタの居る方に向かっていった。

「いらっしゃいませぇ。あら? 斧百合ちゃん」
「ごめんなさいですの。今回は買い物じゃなくて、尋ねたいことがあって……」
「尋ねたいこと、ですかぁ? ……あら? そちらの方は?」

 斧百合の背後にいたルナに、ニタが気づく。

「あー、こいつは刃神ルナですの。私の旅の仲間ですのよ」
「そうなんですかぁ! はじめまして!」

 そう言ってニタはルナに向けて煌びやかな笑顔を見せた。まぶしい!

「よ、よろしく……。ところで、消えた王女について何か知らないか?」
「王女様ですかぁ? 旅館のほうに避難しているという事は存じてますよぉ。でもごめんなさい……店のお仕事が忙しくって、直接お会いしたことはないんです……」
「そうか……変なことを聞くが、あなたが女王様本人なのではないか?」

 ルナも自分で不自然な問いかけだとは分かっていたけれども、こうするしかなかった。一人ずつ、虱潰しに探していくしかないのである。
 しかしニタは顔を真っ赤に染めて否定した。

「へ、わ、私が女王様? そ、そそ、そんな! 私は一介の武器屋の店員に過ぎませんよ! それに私のお父さんは、王様ではなく南東で警備をしているドストフという兵士ですよぉ」
「ま、マジで……」

 それもそれで、衝撃の事実ではある。あんなむさ苦しいおっさんからこんな可憐な少女が生まれるなんて……信じられない。

「も、もうっ! びっくりさせないでくださいよぉ。面白い発想ではありますけど……そういう冗談はもう少し仲良くなってから……ね?」
「あ、ああ……。悪かった」
「王女様ってどんな方なんでしょうねぇ? きっととっても綺麗なんだろうなぁ――」

 結論から言えば、ニタは王女ではなかった。
 だがそのまぶしい笑顔が、調査に疲弊していたルナ達を癒したのもまた事実。

「……もうあの子が王女様でいいんじゃないかな……」

 そんな呟きは明けない夜空に溶けていくだけである。


 ――容疑者3.魔法の解析ならお任せあれ☆女教師・ベアトリーチェ

「あら、ルナ様方ではありませんか。お久しぶりです」
「…………」
「どうかされましたか?」
「……ないな」
「い、いや念のため聞くですの!」
「いやだ! 例え母国ではないとしても! こんな女性が王女様だなんて信じたくないッ!」
「私が王女……? 面白い冗談を言いますね。ですが“ヘカトン陛下”の一人娘である王女様がこんなおばさんなわけないでしょ?」

 それな。

「あなた方がなぜ消えた王女様の行方を捜しているのかわかりませんし、そもそも消えた理由すら不明な現状、あなた方に何らかの助言をするのはやめておきます。あなた方を信頼していないわけではありません。ただ単に、無責任な言葉で他者を翻弄したくないのです」
「ああ……。変なことを聞いてすまなかった」

 ベアトリーチェは高度な魔法を扱う大学の教師なだけあってよく出来た人間である。
 今のルナには魔術は使えない。しかしこれがもしその才覚に目覚めていたとしたならば、彼女に師事していただろう。


 ――容疑者4.いたずら魔法少女☆ビアンカ

 ビアンカは魔法大学の生徒だ。その性格はどこかルナに似たものがあり、それは彼女自身自覚していたことである。
 ゆえに、声を掛けるのに手間は掛からなかった。

「ビアンカ」
「あらルナじゃない。久しぶり」
「突然で悪いんだが、消えた王女について教えて欲しい」
「王女様? え、消えたの? じゃあ今はいないんだ」
「そこからか! ……いや、違うな。もしかしてお前が王女本人なんじゃないか? いや、そうだろう!」
「唐突にあふれ出すその自信は一体どこからきたんですの……」
「私が王女? そんなわけないでしょ。王女として生きるとか、そんなつまんない人生なんて考えただけでゾッとするわ。絶対に嫌よ」
「……そういう考え方もあるのか」

 ***
 
 結局、容疑者として尋ねた女性陣は皆王女である事を否定した。本当の女王が誰なのか、未だ確信は持てないまま、ルナ達は街中で途方にくれていた。

「結局調査も行き止まり……。誰か救いの手を差し伸べてくれる人はいないのですの……?」
「いや……一つだけ分かったことがある」
「え……なんですの?」
「この事件が迷宮入りだという事だ!」


 続く!!




 尺の関係で打ち切りました。
 次回! 第七話『ドキドキっ! 王女様は男の娘!? 閉ざされた王国で巻き起こる禁断の情事(はぁと』
 おたのしみに!

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[ 2015/12/20 16:46 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(2)

第五話「詐欺に掛かる吊り橋」


  
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* 王宮の生き残り *

 ルナ達は〈クリティアス〉に戻り、ナインハートから預かった書物をヒレルに渡した。

「待っていました! これが〈クリティアス〉の失った空白の時間!」
「〈クリティアス〉に関しての情報は殆ど消失してしまっているらしい……」
「なるほど……しかしこれで大体の状況は把握することが出来ます。しかし問題は、あの空に浮かぶ王宮です。我が王国は魔法の伝統が長く続いていますが……それでもあんな魔法は見たことがない。第一、目的もはっきりしない」

 王国の中心の空から、不気味に顔を出す逆さまの城。ヒレルはそれを眺めながら溜息を漏らす。

「せめて当時の状況が分かればいいのですのに……」
「……実は、王宮にいた方達は現在街の市場に避難しているのです。彼らを訪ねれば城が空に浮かんだ当時の状況について話を聞けるかもしれません」

 ヒレルはもどかしそうにそう告げた。城がこんな惨事になれば、まず責められるのは王宮にいた者達だ。だからその事はずっと隠すつもりでいたのだ。
 しかし時間を超えたという前代未聞の災害に直面し、渋々真実を明かす事にした。

「……なるほど。行こう、市場に」
「王宮の方達のいる市場は王国の北にございます。王族達は宿に集まっているはずです。その中には……王女様もいますので……。どうか、内密に……」
「わかっている」

 ルナ達は北の市場へすぐに向かった。
 宿の看板は目立つところにあり、扉に向かって進もうとした瞬間。

「……おい、ルナよ」
「ああ……。わかってる」

 翁加とルナは、何者かに監視されている事にすぐに気づいた。
 殺意はないようだが、その者がルナ達をよく思っていないことは、背筋を走る寒気から容易に察することが出来る。

「……誰かがこっちを見ていますね」

 それまで無口でいたノームサーナが、この時言葉を発した。

「お前、よく気づいたな……」
「…………」

 しかしそれ以降、再びノームは無口になった。
 ノームも翁加と同じ――いや、それよりも早くにその存在に気づいていたのだ。
 この研ぎ澄まされた感覚は、ビーストテイマーに就職したためのものなのだろう。ルナはその時、そう“勘違い”をしていた。

「とりあえず、街中で争いを起こす気はないようだし。このまま宿に入ろう」

 ルナ達は宿屋に入る。一階のフロントに、王族と思わしき集団が見受けられたが、声を掛ける前に受付の女に捕まってしまった。

「申し訳ありません。当店は現在満席でして……」
「いや、私達は客として来たのではない。そこにいる者達と話をしたくてな」

 ルナがそういうと、派手な服を着た少女は心底不安げな表情を彼女に向ける。
 元々良い暮らしをしていたからか、どこか居心地が悪そうだ。

「……! だ、誰ですか? わ、わたしは何も知りません!」
「いや、私達は――」
「お待ちを。どなたかは存じませんが、王女様にむやみに近づくのはおやめください」

 そういってルナ達を制止したのは、召し使いの格好をした老婆だった。

「王女様は避難生活で大変疲れていらっしゃいます。用件があるのならば正式に謁見を要請してもらえないかしら」
「え、謁見要請だと……?」
「そうです。普段ならば王宮官吏たちの複雑な手続きを経て許可が下りるのが王族の謁見――ですが、城があんな風になり避難生活を余儀なくされている現状、そんなことを望むのは無理があります。それに急に城を離れなければならない状況で物資も不足して……。あっ、そうだわ」

 召し使いの老婆は何かをひらめいたようで、他の者と同じような眼差しをルナ達に向けた。 この時点で、嫌な予感しかしなかった……というより、これはもう確定事項。逃れられない運命《カルマ》――。

「今申しましたように、私達は急いで城から逃げてきました。そのおかげで今私達はとっても大変な状況に置かれているの。……そこで。もし、あなた達がこの困難な状況を助けてくださるのなら、王女様との謁見を考えて見ますけど。どうでしょう?」
「……何をすればいい」
「ふふ、ありがとうございます。森にいる堕落した中級魔法使いを倒して、衣の切れ端を150個ほど集めてきてください」

 150個とはつまり、750個である。150 = 750;
 翁加の脳内コンパイラはエラーを吐き続けていた。

「ヴァア……」

 翁加のデスボイスと共に、召し使いのお使いが始まった。

「クソ……こいつらはなんでモンスターになったんだ。元々は普通の魔法使いだったんじゃないのか?」

 森のはずれ、堕落した中級魔法使いが大量に出現する場所で、衣の切れ端を集めながらルナは愚痴を零す。
 結局、750個もの切れ端を集めてしまった。所要時間は20分ほど。結構単調な仕事である。

「ヴァ……」
「あの召し使い……絶対人遣い荒いだろ……。これだけで謁見させてくれるとは到底思えん」
「ヴァア……」

 ルナ達も度重なる“お使いイベント”に苛立ちを覚え始めていた。
 そもそもこんな布切れを何に使うんだよ。なんでわざわざ堕落した魔法使いから取るんだよ。明らかやばそうだろ。他にもっと調達ルートあったはずだろ。バカかよ。


 ***
 

「……もってきたぞ」
「感謝いたします。これで今必要な布地は用意出来たのですが……。思ったより時間がかかりませんでしたね……。これからどうすればいいかしら……」

 召し使いの老婆は何か思い悩んでいる様子だった。
 次は何を頼もうかと考えている者とは少し違って、何かに焦っているような雰囲気がある。

「おい、どうしたんだ」
「……仕方ありません。ルナ様、申し訳ありませんが布地だけでは足りません。壊れた柄(赤)を150個集めてきてくださいますか?」
「は? 謁見を許可してくれるんじゃなかったのか!」
「思ったよりルナ様達が早く戻ってきてしまって……いえ、なんでもありません。王女様にお会いするためにはそれだけの真意を証明しなければなりません。ですので、頼んだものを持ってきていただけないのであれば、謁見は許可できません。どうしますか?」
「……わかったよ。すぐに集めてくるから待っていろ」
「ヴァアアアアアアアアアア!」

 その時突然、翁加がこれまでにないほどの大音量でデスボイスを発する。
 その場にいた多くの者が驚き、それに目をやった。

「おい、翁加! どうしたんだ! 今日のお前、いつにも増してやばいぞ!」
「ヴァアア……! ヴァアアアア!」
「や、やっぱり……」

 斧百合が、何か心当たりがある様子で慌てふためいている。

「何か知ってるのか? どうなってるんだこいつは! 頭大丈夫か!」
「じ、実は……――。翁加は、精神にあまりにもストレスが蓄積されると、デスボイスで発散してしまう癖があるですの……!」
「ヴァアアアア……!」

 Ω ΩΩ< な、なんだってー!

「い、一体どうすれば元に戻るんだ!」
「わ、私にもわかんないですの! 以前こうなったときは、弱いモンスター相手にひたすら無双させてたら元に戻ったんですの……」
「うわあ……」

 この場には翁加が余裕で処理できるほどの弱いモンスターはいない。

「ヴァア!」
「……コレ、正気は保っているのか?」
「た、たぶん……ですの。おーい、翁加」
「ヴァ!」

 返事はするようだ。ただ、目は大きく見開き、口から小さい舌を変な方向に曲げながら突き出しているその姿は、決して公衆の面前に晒して良いものではない。
 しかし、そう言っていられる状況でもなかった。

「うーん……。頼みごとはさっさと終わらせたいし、やむをえん。しばらくこの状態で先に進もう。……万が一の時があったら、その時は斬り伏せる――」
「ヴァァ……」

 かくして、ルナ達は頼まれたものを集めるために森へ向かった。

「750個って結構大変なイメージあるけど、意外と慣れてきたな」
「ブッチッパッドゥドゥヴァアアアアアアアアア!!!」

 翁加の症状は悪化していた。ルナはそれを憐れみに満ちた眼差しで見ることしか出来なかった。

「よし、集まったな! もどろう!」
「Inside, the cracked cold worrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrld !!!」
「お、おい翁加……落ち着けって」
「you see that fire burns your mind !!!!!!!!」
「gonna take off」
「okay」

 こうして宿屋に戻ってきたルナは、依頼されたものを召し使いに渡した。

「感謝いたします。しかしどうしたものでしょうか……」
「まだ何かあるのか……?」
「fu** the angels of grave ! vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaar!」

 翁加の惨状を見て、斧百合たちは茫然とするしかなかった。
 果たして目の前に居るのは本当に陰陽師なのか。根本的な疑問が彼女達の脳裏に浮かび上がる。

「で、これで謁見は許可してくれるか?」
「……王女様はお疲れのようで、今日は謁見を許可する事は出来ません。また後日にしてくださらないかしら」
「いい加減にしろ! 二度も頼まれたものを持ってきたじゃないか!」
「仕方ないでしょう。まさか、精神的にも疲弊している王女様をこれ以上苦しめるおつもりですか? お帰りください」
「ふざけるな……」
「何度も頼みを聞いてくださり感謝しています。あなたにクリティアス王家の御加護がありますように」

 結局、王女との謁見は許可されることがなく、調査の雲行きが怪しいまま宿屋を後にすることになってしまった。
 淡々とした召し使いの物言いを思い返すたび、良心は怒りで煮えたぎる。ルナだけでなく全ての者がそんな状態になっていた。

「クソッ! こんな宿屋私の剣戟を持ってすれば一瞬で粉々に出来るんだぞ!」
「落ち着くですの、ルナ……。ここで敵対する行動を起こせば、調査どころの話ではなくなってしまいますですの……」
「ぐ……」
「あのー。ちょっといいですか?」

 その時、背後からローブを被った少年に声を掛けられた。

「……なんだお前は。私は今機嫌が悪いんだ。余計な事を言ったら斬るぞ」
「す、すみません。ボクはイアン。王宮の侍従職を勤めています。さっきのメイド長とのやり取りを聞いていまして……。ボクにいい考えがあるんです。少しいいですか?」
「なんだって……?」

 現れた少年は、ルナ達にニッコリとした笑いを向けた。


 続く!!





 ストーリーをまとめつつ、時には矛盾点を当たり障りのないように改変しつつ。
 それに加えて5キャラ同時進行での前提。
 メッチャツライ。しかも第三者視点で書く小説はまったくもって慣れていない。
 個人的にはかなり書きにくい。どうしても心理描写が曖昧になってしまう。

 ちなみに中の人は連休に入った。バイトもしてないので暇である。が、この暇な時間を有効利用したいところ。
 もうすぐシュウカツ!が始まるので。色々な企業を調べないとね。
[ 2015/12/19 18:54 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(0)

第四話「時空を超えて、お届けします!」


  
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* 何となく魔法少女っぽい *

 ルナ達が魔法大学レンハイムの近辺を歩き回っていると、チェンと同じ色調の制服を着た少女を見つけた。栗色の前髪はきちんと揃えられ、凛々しい顔立ちをしており、チェンが言うようなだらけた性格の持ち主とは思えない雰囲気をまとっている。

「お前がビアンカか?」
「あら、あなた達は〈エレヴ〉から来たっていう……」

 どうやらビアンカは既にルナ達の情報を手に入れていたようだった。

「そうだ。私は刃神ルナ。訳あってメイプルワールドを旅している剣士だ」
「ちょうどよかったわ。コレを見て」
121801_item.png
 ビアンカが差し出した手には、青みを帯びた黒い石が乗っていた。ぼんやりと光を纏ったそれは、森の中で見た墓石のようなものや、街中のいたるところにある看板と似ている。

「それは……?」
「これは反魔力を凝集した反魔力石のかけらというモノよ。外のモンスターが落としたのを見たことないかしら? そしてこれ、反魔力凝集機――またの名を、I.M.S(Imaginary Magic Suspender)。これを持ってすれば、この鉱石から反魔力を集められるの」
「反魔力……? 初めて聞く言葉ですのね……。それが、この街の動力源なのですの?」
「うん。原理は難しくて私にも説明は出来ないけど、ここ〈クリティアス〉にはその反魔力を利用した魔法道具がたくさんあるの。――今、私が作ろうとしている武器も含めてね」

 ビアンカは手に持ったおもちゃの木の剣を軽く振りながらそう言った。その瞳から僅かに発せられる怒りに、ルナは気づいていた。

「で、ここからが本題なんだけど。郊外の森にいる赤く燃え上がったモンスターを退治して、この反魔力を集めてきて欲しいの!」
「……ああ。了解だ」
「ありがとう! 本当は私も自分の力でやりたいんだけどね……。ドストフおじさんに絶対に街の外に出るなって言われてるから……本当にひどいよ」

 ルナ達は反魔力を集めに街の外へと向かう。

「今回も物資集めだ。行こう、翁加」
「心得た」

 そして東側の森に行くと、禍々しい炎を放ちながら蠢く剣の姿があった。
 今回の標的である。ルナは軽々しく跳躍し、浮遊する剣に斬りかかった。

「今回の敵もたいしたこと無いな。さっさと集めよう」

 そう言いながら、ドロップした反魔力石を拾う。
 しかし、そこである違和感に気がついた。

「ん? どうした、ルナよ」
「ない……だと……?」
「何がじゃ?」
「拾ったはずのアイテムがない」
「な……」

 まさか、と思いビアンカから受け取った反魔力凝集機を展開する。

『チャージされた反魔力は 16 です』
「凝集機がしゃべった! ……ってそうじゃない! これまさか、アイテム自体の移動が出来ないのか! だとしたら全員をこの場に集めなければならないじゃないか!」
「ヴァ……」
「一旦戻ってフラネーヴェ達と合流しよう……。相当面倒なことになった」

 そして十数分経って、ようやく彼女達は森に集合することが出来た。

「この凝集機にそんなクソシステムがあったなんて……」
「でも、荷物を圧迫しなくなるしその点を考えればいいんじゃないですの? それに我々の目的はこんなヘンテコな石っころじゃないですのよ」
「う、まぁそうか……」
「とにかく、私がある程度殲滅したら、斧百合は〈マジックシェル〉を掛けてくれ。そして一人ずつ一気に回収。これでいこう」
「了解ですの!」
「ヴァ……」
「え……今のは?」

 この時になって、ようやく斧百合が翁加の異変に気づく。翁加は時折低い声でうなり声を上げるのだ。

「なんかヘヴィメタルにはまっているらしい」
「そ、そうですのね……」

 翁加本人がそういったのだから、そう信じるしかなかった。
 それに言われてみれば「ヴァ……」ってなんとなくデスボイスっぽい感じがしなくもない。
 しかし斧百合は、どことなくそわそわとし始めたのである。

「まさか……ですの」
「なにがだ?」
「いや、なんでもないですの。さっさと集めましょう」

 ルナ達は割りを食う依頼に悪戦苦闘しながらも、なんとか1人300ポイントに及ぶ反魔力を集めきった。

「みんな無事か?」
「ふぅ……さすが斧百合だ。魔法障壁のおかげで全く怪我しなかったぜ」
「それほどでもある、ですの!」
「さて、戻るか」
 ※この時ノームサーナ君は4回くらいやられました。

 ***

「持ってきてくれたのね! えへへ、必要な反魔力は揃ったから、その凝集機はあげるよ! さーてと、どんな武器を作ろうかなぁ」
「ところで、私達は〈クリティアス〉について調査しているんだ。何か知っていることがあったら教えて欲しい」
「この王国について? うーん、ごめん! あたし歴史の授業中はいつも居眠りしてたから何も知らないわ。歴史について知りたいなら官庁の書記をしているヒレルおじさんに会ってみればいいかも。たくさんのことを知っていると思うわ」
「そうか、ありがとう」
「官庁は街の西にあるわ。学校も図書館も閉鎖されちゃって、気を落としてるみたい」


 結局、ビアンカからも有用な情報を得ることは出来なかった。チェンと比べれば数倍まともな性格をしていたのでそこまで怒るほどの事でもなかったが、調査の行く末は暗雲に包まれたままである。
 ルナ達はヒレルという人物に会うために西に歩き出す。


* 抜け落ちた歴史 *

 〈クリティアス・官庁〉――街の西側には魔法大学ほどの大きさの建造物があり、建物の前に立てられた掲示板には王国民に向けられさまざまな情報が掲示されているようだ。
 そこでルナ達はヒレルと出会った。鼠色のひげと鼻毛がつながっており、フラネーヴェは出会いがしらに噴出し、今も必死に笑いを堪えている。
  121802_person.png


「こんな時に〈クリティアス〉を訪れるとは……。それで、一体何のご用でしょうか?」
「私達はこの国を調査している。これまで色々な人々とコンタクトを取ったが、この国の歴史と私達の知っている歴史とでは数百年以上の差異が生じている」

 それを聞いたヒレルは「ばかな……」と、驚き目を丸くしながら言った。

「……暗黒の魔法使いの攻撃を受けたとはいえ、まさかそんな事態になっていたとは……。想像が付きませんね……」

 それからルナ達はこれまでの経緯を加えながら、外の世界についての情報をヒレルに伝えた。ヒレルにとっては信じられない言葉の数々だったが、彼はその全てを真摯に受け止めていた。

「……ということで私達は今ここにいる」
「今でも信じられませんが……。確かにあなた方のいた時代はここよりも未来でしょう。……いや、暗黒の魔法使いの攻撃を受けたのは〈クリティアス〉ですから、“こちら側の時間が止まっていた”といったほうが正しいですな。問題なのは、我々が外の世界でどれだけの出来事が起きたのか、何一つ知らないということ。人々の記憶から〈クリティアス〉に関する情報が消えるくらいですから、相当長い年月が経っているのは間違いありませんが……」

 この人物、書記を務めるだけある――ルナは心の中でそう思った。にわかには信じられない事実に直面したうえで、自らの問題を並べ、解決への糸口を手探りではあるが探している。
 並大抵の人間では出来ないことだ。
 しばらく考えをめぐらし、何かを思いついたのかヒレルは口を開いた。

「ルナさん達にお願いがあります。これからわが国の歴史書を一冊お渡ししますので、これを〈エレヴ〉に届けていただけませんか? そしてこの歴史書から途絶えた部分――すなわち〈クリティアス〉の抜け落ちた歴史に関する資料を持ってきていただきたいのです」
「わかった。待っていろ」
「これをお使いください。この魔法玉を使えば、〈エレヴ〉や〈クリティアス〉に転移することが出来ます」
「へぇー。用意がいいじゃん」
「できるだけ急いで戻ってくる。それじゃ」

 ルナ達は魔法玉の光に包まれ、〈エレヴ〉へと飛び立った。


 ***


 まぶしい光が消え、目を開くと視界には豊かな自然が映る。〈エレヴ〉に転移したのだ。蒼穹には鳥達が舞い、どこからは川の水が流れる音が聞こえる。
 その島は、空に浮かぶとは思えぬほどの暖かさにみちていた。
 島の東にある騎士団の殿堂にルナ達は向かった。

「ナインハート、ちょっといいか」
「おや、ルナさんではないですか。王国の調査はどうでしょうか」

 ルナが声を掛けたのは〈エレヴ〉の宰相――女王の代わりに執務を代行している、いわば〈エレヴ〉の代表者だ。
 
「ああ。ここにはその件で来た。これを見て欲しい」
「これは……。歴史書? しかも数百年前の……! どうしてここまで状態が良い物をあなたが?」
「それは〈クリティアス〉で渡せと頼まれたものだ。代わりにこちら側の歴史書を持ってこいと頼まれている」

 ナインハートは手渡された〈クリティアス〉の歴史書を見て、心底驚いている様子だ。

「……暗黒の魔法使いに関しての記録は、殆どが残っていません。長い年月が経っているし、しかも戦時中にその多くが渦中に飲まれ、燃えてしまいましたからね。これは〈クリティアス〉に関しても同じです」
「うーん……そうか。そう伝えてくるよ」
「ただ――」
「……?」
「とある過去の記録に〈クリティアス〉かと推測出来る一文があります。そこには『暗黒の魔法使いに抵抗した見せしめとして、一夜で消えた王国があった』とだけ記されています」
「まさか……」
「そうです。表現が難しいですが……、今の〈クリティアス〉は、“現在の時間軸に存在する、過去の王国”ということです。過去を生きる人々が、未来について知りたがるのは当然のことでしょうね」

 過去の王国が、現在に転移した――?
 ルナは茫然とその事実を受け入れるしかなかった。

「これまで色々な経験をしてきましたが、まさか王国ごと時間を超越するとは……。本当に驚きました。ルナさん達は引き続き調査をお願いします。なぜ暗黒の魔法使いは〈クリティアス〉を攻めたのか? そして何故城が空に浮かび上がったのか? 突き止めるべき事はまだたくさんあるのですから」
「……ああ」

 一国の時間軸を歪ませる程の魔法使い。ルナ達が相手にしようとしている敵はあまりにも強大だった。
 それを実感したルナの頭に、ナインハートの言葉はしっかりと入ってこなかった。
 頭の中を冷たい鎖が蛇のように這い回っている感覚がして、ルナはすぐにそれを振り払った。


 続く!




※反魔力凝集機(I.M.S)の正称(Imaginary Magic Suspender)は適当に中の人が考えました。

 クリティアスの前提……長い。5キャラ同時進行で進める前提クエストが、ここまで大変だとは思いもよらなかった。
 まぁ、効率的なレベリングのためなので仕方がない。連休に入ったのでさっさと終わらせちゃいます。
[ 2015/12/18 21:47 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(0)

第三話『悲劇の王国で暮らす者』

  
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* 時の止まった王国 *

 ルナ達は〈ミナル森〉に突如現れた王国〈クリティアス〉の街並みを調査していた。
 街の空には穴が空き、雲を走る禍々しい電流と共に巨大な城が逆さになって顔を出している。
 街中にはいたるところに黒耀の石碑が立っており、魔法文字が刻まれている。これは郊外の森にも散見されたものだ。

「雰囲気としては……マガティアが近いですのね?」
「あぁ、確かに。なんとなくこっちのほうが魔法っぽいけど、一昔前のマガティアに居るみたいだ」

 ニハル砂漠の外れにある錬金術師の街〈マガティア〉は、魔術と機械、そして生物学の融合を果たそうとする、少々怪しい雰囲気の漂う街だ。〈クリティアス〉が西洋なつくりをした建物が多い点を除けば、〈マガティア〉との共通点は大いにある。しかしそれでも、彼女達の心のどこかにこびり付いた違和感は、拭い取ることが出来なかった。

「突如現れたモンスターに苦労しながらも、人々はそれなりの平穏をもって暮らしている。……なのに、なんだ。このもやもやした感じは……」

 結局、隊長ブンデルのいる北の幕舎に到着するまで、違和感の正体に気づくことは出来なかった。
 北の幕舎にもイザク達がいた場所のように、兵士のためのテントが用意されている。だがそれと比べて此方のテントは幾分か大きかった。駐屯地としての役割も果たしているらしい。


「おい、そこの兵士。ブンデルという奴はどこにいる?」
「……ん? お前は確か……。ちょっと待っていろ」

 兵士はそそくさとテントへと向かっていった。

「追いかけよう」
「今、待ってろって言ってなかったか……?」

 ルナは人の話を聞かないタイプなのである。
 幕舎のテントに入ろうとすると、中から茶色い無精ひげを伸ばした強面の男が現れる。羽の装飾のついた金の兜を被っているところから、この男がブンデル隊長であることは容易に察することが出来た。

「君が刃神ルナだな? 待っていたぞ」

 幕舎の中、木で出来た机を囲むようにルナ達は席に着く。彼女達の頭上には青白い光を放つランプが灯されていた。

「君達の活躍については既に聞いている。急に現れたモンスターに頭を悩ませていた所だったんだ。色々と助かったぞ。――以前にも時々モンスターが現れる事はあったが、今見えている奴らは明らかに生物ではない。あんな不気味な奴らがどうして突然現れたのか、何かの前兆ではないかと心配だ……。」
「私も今までに武器が自我を持って襲ってきた経験などないな……。大して苦戦する相手でもなかったが」
「そういえば君達はエレヴからやってきたと聞いている。もしや〈クリティアス〉を支援するために女王様が君達を送ってくださったのか?」
「……いや、残念だが私達はここがどんな場所なのかを調べに来ただけだ」
「ここがどんな場所かを調べに来た? お前は何を言っているんだ。ここは以前、他でもないエレヴの女王・アリア様が自ら訪問してくださった場所だぞ」
「何? 『アリア』だと……? エレヴの女王の名は『シグナス』なのだが」
「ん……? どういう事だ……。暗黒の魔法使いの侵攻に備えるため、アリア女王がついこの間会談を開いていたはずだが……。シグナス? いつの間に女王が変わったのか? いや……そんなはずはない」

 やけに会話がかみ合わない。その場にいる全員が頭に疑問を浮かべていた。
 これではまるで、時系列の歯車が合っていない。

「いや、確かに暗黒の魔法使いの侵攻に備えている点は一致してるんだが……」
「……一度、王国の者達と話をしてみたほうがいいかもしれないな。王国には知識の豊富な人がたくさんいるから、今の状況を説明してくれるだろう。ちょうどベアトリーチェ先生に一件調査をお願いしたいことがあるのだ。行くついでに伝えてはもらえないか?」

 でたー! 『OTSUKAI』!
 ルナは心の中で叫んだ。まぁ、会話するだけならば簡単だろう。

「いいだろう」

 ルナは快くそれを受け入れ、ブンデルから青く染まった金属を渡された。

「それは少し前に義勇隊長のドストフから送られてきた金属だ。近隣を徘徊するモンスターの戦利品の中からでてきたらしい。だがこのままでは使い道がないから、魔法大学の教授、ベアトリーチェ先生に見てもらおうと思っていたのさ」
「魔法大学なんてあるんですのね? ちょっと興味深いわ」

 ブンデルの言葉に、斧百合はいささかの探究心の炎を灯す。

〈魔法大学・レンハイム〉は王国の東に位置している。ベアトリーチェ先生は博識な方だ。お前達の疑問にも答えてくれるだろう。頼んだぞ」

 ルナ達は魔法大学を目指し、再び王国の内部へと足を運ぶ。


* 魔法大学・レンハイム *

 王国の東に行くとひときわ大きな建物があったので、それが魔法大学であるという事は一目瞭然だった。建物の前に、赤い縁取りをされた、いかにも教師っぽい眼鏡をかけた目つきの悪い女性がおり、ルナは声を掛ける。

「ちょっとすまない。貴方がベアトリーチェか?」
「ええ。そうですけど、あなた方は……?」
「私は刃神ルナだ。ブンデルからこの鉱石を届けるように言われた」
「ああ、あなた方がブンデルさんの言っていた方達ですね。お待ちしておりました」

 ベアトリーチェは青い鉱石を受け取り、手にした杖をそれに向ける。淡い光が杖から発せられ、やがて弱々しく消えていった。

「お預かりした金属にはどうやら魔法の気運が残っているようです」
「なっ、まさか今の一振りで魔力残滓を感じ取ったのですの……?」
「完全な解析には少しお時間を頂きますので……。そういえば、金属の件以外にもご用があると仰っていましたね?」

 ルナは彼女に、これまであったことを説明した。クリティアスを調査するためにやってきたのに、話が噛み合わず、まるで時間軸がずれているような気がした事。

「――あの日、暗黒の魔法使いの侵攻があってから、この王国はおかしくなってしまいました。互いの情報に齟齬があるのも、もしかしたらそれが原因かもしれません。あの城も、あの日の侵攻以来ずっと空に浮いたままなのです。なんともおぞましい光景ですが……」
「何? あの城は途中から空に浮かぶようになったのか?」
「ええ。街の中央にある廃墟はご覧になられましたか? あそこは元々王宮があった場所です。一体なぜあんな事になってしまったのか、不思議で仕方がありません……」
「これも暗黒の魔法使いとやらの仕業か……」
「その可能性が高いです。おかげでここ、レンハイム魔法大学も守護の魔法が発動されている状態です」
「ええっ! もしかしてこの大学、はいれないのですのっ?」
「申し訳ありません。レンハイム魔法大学は、魔法の国〈クリティアス〉の中でも最も高度な魔法を研究していた施設――暗黒の魔法使いの攻撃からは絶対に守らなければならないのです」
「うぐ……それなら仕方ないですのね……」
「私はこれからこの魔石の本格的な調査を始めます。時間がかかりそうなのでその間は他の住民とお話をしてみてはいかがですか?」
「そうさせてもらう。この王国の惨状に暗黒の魔法使いが関わっているというのならば、私も無関係というわけではあるまい。ほら、行くぞ斧百合」
「あ、あの……」
「ん?」

 街中を歩き出そうとした時、赤いマントを羽織った少年に声を掛けられた。
 制服らしき格好をしている。魔法大学の学生だろう。どこか弱々しい雰囲気は無口なノームサーナと似ている。

「と、突然話しかけてすみません……。ボクはチェンっていうんだ。君達、外の世界から来たんだよね。よかったらボクの話を聞いてくれないだろうか……」
「ああ。なんだ?」
「実は……ボクの考えが正しければ、全ての原因はボクにあるのかもしれない」

 思いもよらぬ少年の発言に、ルナ達は絶句する。一体、彼は何者だ。悪い人間には見えないが、ルナ達は念のため戦いに備える。

「……なんだって?」
「……ったから」
「え?」
「ボクが宿題をしなかったから! この王国はこんな状態になってしまったんだ!」

 ただのマジ**チだった。

「何言ってんだこいつ」
「なんて不幸なんだろう……。で、ものは相談なんだけど、城の外を徘徊している堕落した魔法使い達から、下級魔法使いの衣の切れ端を100個集めてきてくれない?」
「なんでそんな唐突にお使いを頼むんだよ! もうすこしマシな口実を用意してから言え!」
「ボクの予想が正しければ、これでクリティアスは救われるんだ! 悲劇を呼んだ罪人、自らの手によって……」
「だめだこりゃ……。行こう、こいつ狂ってる」

 しかし、彼女達は逆らえない。これは、彼女達の目的を果たすために用意された、定められた運命なのだから……。

「ヴァ……」

 先ほどまでおとなしかった翁加が、再び低い声で呻き声を上げ始めた。


 ***

「ふぅ……ようやく終わったな」

 今回の依頼もアイテム収集。現地へ赴くのはルナと翁加の二人だけ。他の三人は街中の調査をする手筈だ。
 頼まれたのは100個だというのに、ルナ達は五人で活動している。ゆえに500個集めなければならないという超次元理論。

「ヴァ……」
「おい翁加……大丈夫か?(頭)」
「ふぇっ……? あ、ああ……気にするな。最近へびぃめたるにハマってるんじゃ」
「それならいいんだが……」
「ヴァ……」
「……戻ろう」

 ……それにしても、こんな布切れを何に使うんだ?
 ルナは疑問を浮かべたまま、少年のもとへ戻った。

「おい、持って来たぞ」
「あ、ありがとう! これでボクの宿題が終わる! 早速ベアトリーチェ先生に提出してくるよ!」
「は?」
「やっぱりただのお使いじゃねえか! あのクソガキ!」

 フラネーヴェの沸点は相変わらず低い。クソガキと言っているが彼女のほうが年下である。

「いや、もしかしたらこれで〈クリティアス〉は平和を取り戻すんじゃ――」
「んなわけあるかっ! 考えんでもわかるわ!(逆らえないけど!)」

 しばらくすると、チェンが戻ってきた。その表情は相変わらず曇ったままである。きっと、王国が救えなかった自分を責めているのだろう。足取りもどこか覚束ない。

「……ボクの勘違いだったのかな? おかしいな……。あ、さっき手伝ってくれた人だ。ありがとうね。結果は予想とは違って〈クリティアス〉の姿は戻らないけど……」

 そう嘆きながらチェンはため息を漏らす。

「本気で元通りになると思ってたのかよ! やっぱこいつおかしいって……!」
「この王国がこんなふうになった日、ボクは宿題が終わってなくて、学校へ行きたくなかったんだ。心の底から“学校なんかなくなればいい!”って思った」

 チェンは唐突に自分語りを始める。確かに、大学生にとって課題とは大きな壁の一つといえるだろう。普段の講義と違って『一限ピッ』で解決出来るものでないし、かといってネットの力でデッドコピーをすればまともな評価はもらえない。
 大学生という人生全体の夏休みといえる貴重な時間を、些細な障壁に奪われる。逆らえば、待つのは留年という名の黒い沼であり、そこに流れるは事実を知った両親の――。

「おい世界観ブレはじめてんぞ! それくらいにしとけよ!」
「……? ところが、本当に暗黒の魔法使いが攻めてきて、学校が閉鎖されたんだ。もしかしたら今の状況はボクの隠された力のせいかもしれない。学校に行きたくないというボクの願望がそうさせたんじゃないかって」

 この少年、ただの中二病である。魔法大学という大それた機関に通いながらも、考える事はあらゆる挙動が初々しい、未だ挫折と孤独を知らない中学生となんら変わりはない。

「それで、さっき宿題を全て終わらせて教授に提出してきたわけさ。けど、王国は本来の姿を取り戻さなかったし、その兆しも全く見えない。こんな大変な状況なのに、宿題を提出するなんて、と無駄に教授を感激させただけ」
「……いや、それ感激してねえから……与えてんの失望だから……」

 ――まずいな。
 ルナは戦慄していた。この少年は、フラネーヴェのツッコミが追いつかないほどに狂気に溢れている。翁加は「ヴァ……」と呻き、斧百合は立ちながらうたた寝している。ノームサーナは空気である。
 モンスターではなく、ただ一人の少年が、ルナのパーティを壊滅的状況に導いた。

「はあ……。本当に力が抜けるね。宿題以外は別に学校も悪くなかったのになぁ。友達もみんないなくなっちゃったし、家にいても特にやることはないし、つまんない!」
「…………」
「…………」
「え、終わり!?」

 何も進展がないんですけど!

「あ、そうだ。こんな状況でも上手くやっているビアンカのような子もいるけどね。もしだったら君達も彼女に会ってみたら?」
「ヴァ……」

 嫌な予感しかしない。いや、彼女達を取り巻く予感は既に確信へと変わっていた。

「ビアンカの奴、いつもは居眠りばかりしていたのに急に活発になって。もしかしたら彼女は暗黒の魔法使いの分身……? いや、隠れた能力者だったりして?」

 彼女達の終わりの見えない〈クリティアス〉の調査は、まだ続く。
 ビアンカを探すため、ルナ達は街中を重々しい足取りで歩き出した。



 リアル中二病チェンの紹介するビアンカとは一体何者なのか……!?
 王国の惨状を知ったルナ一行の前に次々と立ちはだかるOTSUKAI軍団――そして、翁加の呻き声の正体が明かされる……!?

 次回、第四話『お使いという名のバトンは進み続ける。過去から今、そしてまだ見ぬ未来へ向かって――』

 お楽しみに!!




 要求量5倍の前提クエストはひじょうにたのしいのでみなさんにおすすめです
[ 2015/12/14 23:43 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(0)

第二話『突如現れた王国でパシられるルナ一行』

  
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* 突如現れた王国 *

「刃神さん、リプレの周辺に突如現れた王国のことをご存知ですか?
 聞いた話では、その王国の空には逆さの城が浮いているらしいです。空に浮いている城だなんて、今まで一度も聞いた事がありません。
 ……それに、よりによってこの時期に現れたということは、暗黒の魔法使いと何か関係があるのではないかと疑ってしまいます。
 そこがどういう場所で、なぜ突然我々の住むメイプルワールドに現れたのか、調べていただけませんか?」


…………
……


 ある日、刃神ルナがエレヴを散策していると、ナインハートに声を掛けられた。
 どうやら〈オシリア大陸〉の中でも自然が豊かな〈ミナル森〉の一部地域に、突然、王国が現れたらしい。
 刃神ルナはナインハートに調査を依頼され、特に忙しくもなかったためそれを承認したのだ。
 どこかへ旅に出かけるときは、必ず《サポーターズ・トリニティ》も一緒である。新たに加わった青髪をした無口な少年、ノームサーナと共に、ルナ達五人は現場へと向かった。

「それにしても、王国が突然現れるだなんて……今までにない事件ですのね」
「ああ。異世界から転移してきたのだろうか? だとしたら私が元の世界に戻る方法も、見つかるかもしれないな……」
「…………」

 刃神ルナは、元々メイプルワールドの住民ではなかった。
 ある日、突然メイプルワールドへと転移し、〈ハヤト〉という肩書きを得たままこの世界に生まれ落ちた。
 しかし周囲の皆がその姿を、かつて生きていた魔法使い・ネバーメルトとどこか重ねてしまうのはきっと偶然ではないのだろう。
 性格も全く真逆の方向を向いているのに、どこか似ている部分があった。

 そして現地に着いた彼女たちの目に映ったのは、怪しげな雰囲気の漂う薄暗い森だった。無造作に置かれた石版には、見たこともない魔法文字〈ルーン〉が刻まれ、淡い光を発している。
 木の葉から差し込むわずかな月の光だけを頼りに、ルナ達は森の中を進み出した。

「な、なんだか不気味だな……」
「ななななんじゃお主……も、もしかして怖いのか? 情けない!」
「はぁ? そのプルプルしてる足を止めてから言えよ!」
「こ、これは筋トレじゃ!」

 《サポーターズ・トリニティ》の中でも強気な二人、翁加とフラネーヴェですらも、その場所の異質さに慄いていた。
 そこは、ただの薄暗い森なのに。正体こそ分からないものの、確かにそこには何らかの“違和感”が存在した。
 森の中には二人の言い争う声だけが響く。
 その時、視界の隅に、ほんの一瞬だけ青い光が反射したのを、ルナは見逃さなかった。

「伏せろッ!」

 その叫び声と同時に、茂みの奥から一本の青い矢が飛来する。それは確実にルナ達を狙っていた。
 ――敵だ。
 予想こそしていたものの、やはりここにもモンスターは生息しているようだ。

「あれは……弓ですの?」

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 やがて現れたのは、青く冷たい光を放ちながらひとりでに浮遊する大弓だった。藤頭の部分には悪魔が乗り移ったかのような顔が現れ、恐ろしい眼光を放っている。
 そしてそこにいたのは弓だけではない。鈍器や剣、短刀といったあらゆる武器が、意思を持ったかのように浮遊し、ルナ達に襲い掛かる。

「まずい、一旦逃げるぞ!」

 彼女達には弱点があった。
 なぜか、みんな同時に動けないのである。誰かが動いている時、必ず他の者は止まっている。なので斧百合が〈マジックシェル〉という魔法防壁を形成し、誰かが一気に安全な場所まで駆け抜ける――といった動作を何度か繰り返すことで、ようやく進めるのだ。
 なぜだろう。それは中の人のみぞ知る。

 しばらく走ると、人為的に設営されたであろうテントが見えた。

「ふう……ここなら安全そうだな」

 ルナ以外の四人達には、戦う力も無ければ体力も無い。ひざに手をつき、肩で呼吸をしながらも、一時だけ得られた安全に安堵の息を漏らす。
 しかしそれも、一人の怒声によって一瞬に打ち破られてしまう。

「な、何者だ、貴様らはッ!」
「え、えっ……」
「怪しいものが〈クリティアス〉に踏み入る事は許されん! 立ち去れ!」

 全身に鎧をまとった兵士が、槍を構えつつ声を荒げて言った。


* 部隊長の許可 *

「これは何の騒ぎだ……。敵襲か?」

 騒ぎを聞きつけたのか、奥からもう一人別の兵士が現れた。その風貌から、このあたりの兵士をまとめる人物である事は想像がつく。

「私達はエレヴから来た。私の名は刃神ルナだ」
「ふむ、エレヴか……。だが、その話を鵜呑みにして怪しい者を入れるわけにはいかない」
「……私達は決して怪しい者ではない」
「私が魔法使いだったら、君達が嘘をついているかどうかなど、すぐに分かるのだがな……。残念ながら私は軍人、君達を信じるかどうかを決めるにはそれなりの手段が必要だ」
「手段……?」
「この一体はおぞましいモンスターで溢れかえっている。ここに来る途中に見ただろう」

 意思を持ったかのように蠢く、武器の形をした物体。兵士が言っているのはそれのことだろう。
 
「以前は居なかったのに突如現れて……。この手で退治したいのはやまやまだが、兵士がみんな逃げてしまってな。街の守備だけで手いっぱいなんだ」

 その後の言葉は、容易に想像が付いた。これは、この世界特有の“オモテナシ”……『OTSUKAI』だ……。
 なんだ、またか……。そう思いつつ、ルナ一行はげんなりした表情を見せる。

「そんなわけで君達があのモンスターを退治――」
「わかった。いってくる」

 ルナ達の戦いが始まった。
 必要なのは、折れた剣刃(青)が50個、落ちた取っ手(青)が50個、壊れた柄(青)が50個……。これが一人前なので5人あわせて各250個。
 非常に骨が折れる作業だが、部隊長の信頼を得るためだ。仕方のないことである。
 だがこれも彼女達にとっては手馴れたことで、アイテムを集めるのにそんな時間は要さなかった。

「意外とすぐに集まったな」
「ま、わらわが居ればこれくらい造作も無いわ」

 今回の依頼はアイテム回収だったため、唯一戦闘出来るルナが人数分集めた。翁加は一切戦闘には加わっていないが、彼女の陰陽術の一つに、地脈を走る霊力を増加させ敵を密集させるといった力がある。
 ゆえにアイテム収集の効率も倍になり、ルナ達は言われたアイテムを十分ほどで集めてしまった。翁加のドヤ顔がまぶしい。

「おい、兵士。持ってきたぞ」
「意外と早かったな。物の状態も良いし、いいだろう。お前達を私の部下にしてやる」
「部下になるために働いたのではない。もう街に入ってもいいか?」
「……いや。まだ物足りないな。もう少し戦利品を集めてきてくれたら許可をしてやる」
「な、話が違うぞ!」
「ははは。お前達が持ってきた戦利品が重要な任務にも使えそうでな! だがそれだともっとたくさんの材料が必要なんだよ。それさえ終われば今度こそ街に入る事を許可しよう」
「仕方ないな。……行くぞ、翁加」
「実に頼もしいな! それこそ軍人の手本というやつだ」

 ――必要なのは、折れた弓(青)が80個、割れた装飾(青)が80個。これが一人分。5人あわせて各400個。
 ……街に入るためだ。仕方が無い。街に入らなければならない理由が、彼女達にはあったのだ。
 刃神ルナと翁加は再び森の中へと入っていった。

「よし……あと、400個……」
「ヴァ……」

 森で狩りをしているとき、翁加の様子がおかしいことにルナは気づく。
 虚ろなまなざしでどこかを見つめ、ヴァ……ヴァ……と呻いている。

「おい、翁加。大丈夫か」
「ん、あ、ああ……。なんでもない。さっさと集めるぞ」
「……?」

 その後も、翁加は時折「ヴァ……」と呻いていた。その度にルナが声をかけるのだが、すると何事も無かったかのように元に戻る。
 そしてようやく、依頼されたアイテムを集め終えたのだった。

「持ってきたぞ」
「おお、君達の帰りを待っていたぞ」

 ――さすがにここまでやって、入れてもらえないという事はないだろう。
 ルナ達は皆、そう考えていた。

「うんうん、いいぞ。さて、次は何を頼もうかな」
「ファッ!?」
「おいこらてめェ! いつになったら入れんだよいい加減に――」
「イザク様! ブンデル閣下からの伝令です!」

 フラネーヴェはとうとう我慢の限界がきたようで、兵士に怒声を浴びせたが、それは途中で他の兵士の慌てた声によってかき消されてしまった。

「あぁ? ど、どうした」

 兵士はイザクに耳打ちし、ブンデルと呼ばれる者からの伝令を伝えている様子だった。
 
「……わかった。お前は持ち場に戻れ」
「はっ!」

 イザクは兵士が戻っていくのを見送ると、「ふぅ……」とため息を吐く。
 
「一体どうしたんだ?」
「それがな、君達の噂がいつの間にかブンデル隊長の耳にも入ったらしい。君達に直接会いたがっておられる」
「ほう……。隊長、か」
「ああ。〈クリティアス〉の有する兵隊の長、ブンデル様は北の幕舎におられる。ぜひ、会いに行きたまえ。……しかし、隊長が会いたいと仰るとは……。もう、許可などどうでもいい。幕舎へは北の森を通ってもいいし、街中を通ってもいけるぞ。さっさと行ってしまえ」

 どこかイザクが残念そうな面持ちだったのは、しばらくルナ達をこき使うつもりだったからだろう。

「どうしますの?」
「……行くしかないだろう。ここがどんな場所なのか、まだわからないし。王国の内部がどうなっているのかも気になる」

 それに、まだ彼女達は“最大の目的”を達成していない。

「――会いに行こう。ブンデルに」

 ルナ達は王国の北へ向かって歩き出した。その目に映る空には大きな穴が空き、逆さになった城が顔を覗かせていた。


 続く!
[ 2015/12/13 20:09 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(0)
プロフィール

オノユリス!

Author:オノユリス!
1993年10月11日生まれ。
性別は男です。

趣味のゲームや小説について書いていきます!



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