これは私の日記帳であり、箱庭であり――そして、帰る場所である。

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01.リスタート Ⅱ

  
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4.分岐

 副リーダーである『コウ』が新たに築いたギルド《LunaDiana》に一人のカンナが加入していた。
 彼女の名は『翁加』。SifrJihad(以下、シフル)と同じように、かつての記憶を受け継いだ者の一人である。

 翁加は、シフルと同じように悩み、考えた。しかしその先に待っていた選択は、シフルとは異なる物だった。
 彼女は《LunaDiana》のメンバーとして生きていくという決断をしたのだ。

 《LunaDiana》は、かつてのギルドのメンバーの多くで構成されたギルドである。前マスターがその生を閉じ、まだ長くは経っていない頃であったにも関わらず、ギルドレベルはそれなりに上がっていた。
 メンバーのギルド貢献度から、日課を欠かさずにこなしていたことは容易に察することが出来る。

 ――これから新たにメンバーを集めて、ランキング上位を目指す? それは、ムリだよ。

 翁加は理解していた。覚悟はあれど、残された時間が少ないことを。ならば、と彼女は少しでも到達点に近い位置からのスタートを選択したのだ。
 彼女は自身のすべきことをすでに理解していたし、そのためにあっという間にレベルを160まで上げてしまった。
 彼女の妹である『斧百合』、『フラネーヴェ』は、《thule》側につく選択をしたが、それでも彼女は自身の選択が間違っているとは少しも思っていなかった。


5.収束

 それから、およそ一ヶ月が過ぎた。
 ある日、現リーダーであるコウが、翁加に声を掛けた。

「メルちゃん、少しお話があります」
「話? いいぞ。場所変えるか?」

 ちなみに翁加は、かつて生きていた魔法使いと同じ呼び方をされている。
 コウに連れてこられた場所は、ヘネシスにある雑貨屋の中だった。棚には色とりどりのポーションが所狭しと並べられている。
 店を経営しているおばさんこそ居たものの、彼女らは『NPC』と呼ばれ、システムから与えられた仕事しか遂行しない種族である。
 話しかけても反応はせず、攻撃をしてもそれは単なる空気のようにすり抜けてしまう。ゆえに、彼らから干渉されることもなく、実質そこにいるのはコウと翁加のみである。

「――で、話ってなんじゃ」

 翁加は訊いたが、内心では何の話をするのかは大方予想がついていた。

「ギルドのことなんですけど……」
「ふむ」

 やはりか、とも思ったが、それまで静寂に包まれていた店内が、余計に静かになった気がした。
 その後、コウは翁加にこれまでの経緯を話した。
 やはり、マスターのいないギルドは活動しにくいこと。
 移住の際に何人かの人と別れることになったこと――。

「そのうち戻る、と言っていた人もいますが……」
「戻る、ね」

 翁加は思わず苦笑してしまう。
 大抵、いつか戻ると言って去る者は結局戻らないまま、メイプルワールドそのものから消えてしまうこともあるからだ。

「『ゆえこ』さんも、いつの間にか抜けてしまいました……」
「うーむ……」

 ギルドにおいて、それまで仲良く活動していた仲間が、フッと居なくなってしまうことは珍しくない。
 それは他に新たな仲間を見つけたか、あるいはメイプルワールドそのものから去るかのどちらかであることが多いのだが、このケースではどうやら前者であったようだ。
 随分と長いことギルドで活動してきたため、大して驚くことでもなかった。
 ただ、誰かが抜けた後の空気というのはなかなか寂しいものがある。こればかりはどうしようもないのだが……。

「まぁ、それは仕方ないな。何処かに奪われたというのならば、実力を示して再び奪い返すまでであろう?」

 それで、相手のギルドとの関係が重い物になろうが、翁加にとっては些細な問題である。

「……で、今後のことなんですけど」
「うむ」
「メルちゃん、別のギルドで新しく活動していますよね」
「う……」

 考えてはいたが、コウはやはりそこを指摘してきた。
 やはり、この場で相談するべきだろうか。メイプルワールドに帰ってきて、このギルドの状況を見て、「復帰しましたwギルド移住よろw」とは頭のネジが全部吹っ飛んでも言えないだろう。
 だから、この時が来るまで、翁加は相談せずにいた。
 でも、いつまでも有耶無耶にしている訳にはいかないのだ。
 翁加はとうとうこの時、自身の考えをコウに告げた。

「……もしも、再び移住する気があるのならば、みなで《thule》に移動してほしい……」

 その言葉を、コウは黙って聞いていた。

「今のこの《LunaDiana》になってから、貢献度も毎日稼いでて、そんな状態で移住しろと頼むのが本当に厚かましい願いだというのは重々承知じゃ。……だけど、これ以上! これ以上仲間を失うのは、嫌じゃ……」

 本音を吐いたのはいつぶりだろうか。生前も含めて今日まで、自分は強がって生きてきたということを自覚してしまう。
 だがおそらくこれからも、僕たちは強がり続けて生きていくだろう。
 弱音を吐くのは、今だけだ。
 ただ、この時間が少しでも長く続いてくれたならば、と心の何処かで翁加は考えていた――。


6.果てを目指す旅


「フラさんいますか?」

 不意に、ギルドのメンバーである『彗星』さんが、フラネーヴェに声を掛けた。
 彗星さんは、最近新規にメイプルワールドに降り立ったユーザーで、ゴールドビーチで知り合って以来、友人になってそのままギルドに誘った人物である。
 レベルこそ低いものの多くの知人がおり、充実した生活を送っているようだ。

「ん、どした?」
「実は新しくギルド作ろうと思いまして」

 突然の言葉に、フラネは少したじろいでしまう。
 しかしあくまで平静を装い、別れと鼓舞の言葉を送った。
 そのまま三人のメンバーが彼に付いて行き、《thule》を脱退した。

「――仲間、増えないなぁ」

 地面に絵を描きながら放ったフラネの呟きは、誰の耳に入ることもなく、虚空へと溶けていった。
 《LunaDiana》の移住の話が彼女の耳に入るのは、その三日後である。

---

 僕は、再びオルビスの『英雄の殿堂』へ向かっていた。
 以前来た時よりも重く感じるその扉を開き、屋内へ入る。

「メルトさああああああああああん!」
「!?」

 何事かと思ったが、喚きながらこちらへ駆け寄るのはカイザーの『ちお』だった。
 ちなみに今の僕は『メルト』さんではない。どちらかと言えば、『シフル』さんか、『オノユリ』さんである。
 ――が、呼び方をいきなり変えられてもそれはそれで違和感があるので、ここは何も触れないでおいた。

「ちおくん、久し振り」

 彼は興奮のあまり正しい日本語を発言出来ず、何を言っているのかいまいち確信が持てなかったので、僕はそっとしておくことにした。
 建物を見渡すと、コウも含めたかつての多くの仲間が、一同に集まっていた。

「みんな……」
「おかえりなさい!」

 今の僕からすれば、彼らとは実力に天と地の差がある。だというのに、彼らは僕の新たなギルドに移住しようと、ここに集まってくれていた。

 ――ありがとう。

 僕は、心の中でそう呟く。
 だが、これからだ。
 ――これから始まるのだ、新たな物語が。

「メルトさん」
「うん……」
「挨拶をお願いします」
「え?」

 突然の頼みに、思わず変な声で反応してしまう。
 ――これではいかんな。これからは再びギルマスなのだ。

  042601.png
  042602.png
  042603.png
   ※クリックで拡大できます。


 不思議と、言葉はすらすらと出てきた。
 思い返せばこっぱずかしい発言をいくつもしていたように思えるが、この時僕はマジだったと思う。

「本当に、勝てるのかな……」

 移住を終えた後、メンバーの一人である『りん』が、呟いた。
 現在かえで総合一位のギルドである《DenDen》は、今の僕達にとって強大なギルドであることは間違いないし、かつての仲間の何人かもそちらに移住している。

「……勝てるさ」

 何の根拠もなく放たれたその言葉は、やがて僕達の中で決意となった。
 そうだ、きっと勝てるだろう。
 その勝利に、どれだけの月日を要するかはわからない。それでも、僕の中でそれは確信としてそこに在った。

 かつて一世を風靡した僕達のギルド《LexDiamond》は、この日とうとうその輝かしい物語に幕を下ろした。
 そして同時に新たな物語を紡ぎ始める。
 僕達は、新たなギルドと共に、世界の果てを目指す旅に出た――。




 ふう。
 疲れた……。

 余談なのですが、こちらをご覧ください。
  042604.png

 コウくんが前回記事の誤字をしてくれました。
 自分でも気づかなかった。それなりに文章を読み返してはいるつもりですが、僕の目を欺いて誤字脱字ちゃんが発生することがあるかもしれません。
 そういう時は教えていただけると助かります。すぐに直しますので。

 というか、こうしてみるとゲーム内だと自分の発言が誤字だらけである。ま、通じればいいんだよ!

 では、また。
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[ 2015/04/26 22:17 ] メイプルストーリー ギルド | TB(-) | CM(2)
王座奪還いたしましょう(`Δ´)
[ 2015/05/02 14:15 ] [ 編集 ]
 おう……!
 きっと勝てるさ。
[ 2015/05/02 16:56 ] [ 編集 ]
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プロフィール

オノユリス!

Author:オノユリス!
1993年10月11日生まれ。
性別は男です。

趣味のゲームや小説について書いていきます!



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