これは私の日記帳であり、箱庭であり――そして、帰る場所である。

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第三話『悲劇の王国で暮らす者』

  
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* 時の止まった王国 *

 ルナ達は〈ミナル森〉に突如現れた王国〈クリティアス〉の街並みを調査していた。
 街の空には穴が空き、雲を走る禍々しい電流と共に巨大な城が逆さになって顔を出している。
 街中にはいたるところに黒耀の石碑が立っており、魔法文字が刻まれている。これは郊外の森にも散見されたものだ。

「雰囲気としては……マガティアが近いですのね?」
「あぁ、確かに。なんとなくこっちのほうが魔法っぽいけど、一昔前のマガティアに居るみたいだ」

 ニハル砂漠の外れにある錬金術師の街〈マガティア〉は、魔術と機械、そして生物学の融合を果たそうとする、少々怪しい雰囲気の漂う街だ。〈クリティアス〉が西洋なつくりをした建物が多い点を除けば、〈マガティア〉との共通点は大いにある。しかしそれでも、彼女達の心のどこかにこびり付いた違和感は、拭い取ることが出来なかった。

「突如現れたモンスターに苦労しながらも、人々はそれなりの平穏をもって暮らしている。……なのに、なんだ。このもやもやした感じは……」

 結局、隊長ブンデルのいる北の幕舎に到着するまで、違和感の正体に気づくことは出来なかった。
 北の幕舎にもイザク達がいた場所のように、兵士のためのテントが用意されている。だがそれと比べて此方のテントは幾分か大きかった。駐屯地としての役割も果たしているらしい。


「おい、そこの兵士。ブンデルという奴はどこにいる?」
「……ん? お前は確か……。ちょっと待っていろ」

 兵士はそそくさとテントへと向かっていった。

「追いかけよう」
「今、待ってろって言ってなかったか……?」

 ルナは人の話を聞かないタイプなのである。
 幕舎のテントに入ろうとすると、中から茶色い無精ひげを伸ばした強面の男が現れる。羽の装飾のついた金の兜を被っているところから、この男がブンデル隊長であることは容易に察することが出来た。

「君が刃神ルナだな? 待っていたぞ」

 幕舎の中、木で出来た机を囲むようにルナ達は席に着く。彼女達の頭上には青白い光を放つランプが灯されていた。

「君達の活躍については既に聞いている。急に現れたモンスターに頭を悩ませていた所だったんだ。色々と助かったぞ。――以前にも時々モンスターが現れる事はあったが、今見えている奴らは明らかに生物ではない。あんな不気味な奴らがどうして突然現れたのか、何かの前兆ではないかと心配だ……。」
「私も今までに武器が自我を持って襲ってきた経験などないな……。大して苦戦する相手でもなかったが」
「そういえば君達はエレヴからやってきたと聞いている。もしや〈クリティアス〉を支援するために女王様が君達を送ってくださったのか?」
「……いや、残念だが私達はここがどんな場所なのかを調べに来ただけだ」
「ここがどんな場所かを調べに来た? お前は何を言っているんだ。ここは以前、他でもないエレヴの女王・アリア様が自ら訪問してくださった場所だぞ」
「何? 『アリア』だと……? エレヴの女王の名は『シグナス』なのだが」
「ん……? どういう事だ……。暗黒の魔法使いの侵攻に備えるため、アリア女王がついこの間会談を開いていたはずだが……。シグナス? いつの間に女王が変わったのか? いや……そんなはずはない」

 やけに会話がかみ合わない。その場にいる全員が頭に疑問を浮かべていた。
 これではまるで、時系列の歯車が合っていない。

「いや、確かに暗黒の魔法使いの侵攻に備えている点は一致してるんだが……」
「……一度、王国の者達と話をしてみたほうがいいかもしれないな。王国には知識の豊富な人がたくさんいるから、今の状況を説明してくれるだろう。ちょうどベアトリーチェ先生に一件調査をお願いしたいことがあるのだ。行くついでに伝えてはもらえないか?」

 でたー! 『OTSUKAI』!
 ルナは心の中で叫んだ。まぁ、会話するだけならば簡単だろう。

「いいだろう」

 ルナは快くそれを受け入れ、ブンデルから青く染まった金属を渡された。

「それは少し前に義勇隊長のドストフから送られてきた金属だ。近隣を徘徊するモンスターの戦利品の中からでてきたらしい。だがこのままでは使い道がないから、魔法大学の教授、ベアトリーチェ先生に見てもらおうと思っていたのさ」
「魔法大学なんてあるんですのね? ちょっと興味深いわ」

 ブンデルの言葉に、斧百合はいささかの探究心の炎を灯す。

〈魔法大学・レンハイム〉は王国の東に位置している。ベアトリーチェ先生は博識な方だ。お前達の疑問にも答えてくれるだろう。頼んだぞ」

 ルナ達は魔法大学を目指し、再び王国の内部へと足を運ぶ。


* 魔法大学・レンハイム *

 王国の東に行くとひときわ大きな建物があったので、それが魔法大学であるという事は一目瞭然だった。建物の前に、赤い縁取りをされた、いかにも教師っぽい眼鏡をかけた目つきの悪い女性がおり、ルナは声を掛ける。

「ちょっとすまない。貴方がベアトリーチェか?」
「ええ。そうですけど、あなた方は……?」
「私は刃神ルナだ。ブンデルからこの鉱石を届けるように言われた」
「ああ、あなた方がブンデルさんの言っていた方達ですね。お待ちしておりました」

 ベアトリーチェは青い鉱石を受け取り、手にした杖をそれに向ける。淡い光が杖から発せられ、やがて弱々しく消えていった。

「お預かりした金属にはどうやら魔法の気運が残っているようです」
「なっ、まさか今の一振りで魔力残滓を感じ取ったのですの……?」
「完全な解析には少しお時間を頂きますので……。そういえば、金属の件以外にもご用があると仰っていましたね?」

 ルナは彼女に、これまであったことを説明した。クリティアスを調査するためにやってきたのに、話が噛み合わず、まるで時間軸がずれているような気がした事。

「――あの日、暗黒の魔法使いの侵攻があってから、この王国はおかしくなってしまいました。互いの情報に齟齬があるのも、もしかしたらそれが原因かもしれません。あの城も、あの日の侵攻以来ずっと空に浮いたままなのです。なんともおぞましい光景ですが……」
「何? あの城は途中から空に浮かぶようになったのか?」
「ええ。街の中央にある廃墟はご覧になられましたか? あそこは元々王宮があった場所です。一体なぜあんな事になってしまったのか、不思議で仕方がありません……」
「これも暗黒の魔法使いとやらの仕業か……」
「その可能性が高いです。おかげでここ、レンハイム魔法大学も守護の魔法が発動されている状態です」
「ええっ! もしかしてこの大学、はいれないのですのっ?」
「申し訳ありません。レンハイム魔法大学は、魔法の国〈クリティアス〉の中でも最も高度な魔法を研究していた施設――暗黒の魔法使いの攻撃からは絶対に守らなければならないのです」
「うぐ……それなら仕方ないですのね……」
「私はこれからこの魔石の本格的な調査を始めます。時間がかかりそうなのでその間は他の住民とお話をしてみてはいかがですか?」
「そうさせてもらう。この王国の惨状に暗黒の魔法使いが関わっているというのならば、私も無関係というわけではあるまい。ほら、行くぞ斧百合」
「あ、あの……」
「ん?」

 街中を歩き出そうとした時、赤いマントを羽織った少年に声を掛けられた。
 制服らしき格好をしている。魔法大学の学生だろう。どこか弱々しい雰囲気は無口なノームサーナと似ている。

「と、突然話しかけてすみません……。ボクはチェンっていうんだ。君達、外の世界から来たんだよね。よかったらボクの話を聞いてくれないだろうか……」
「ああ。なんだ?」
「実は……ボクの考えが正しければ、全ての原因はボクにあるのかもしれない」

 思いもよらぬ少年の発言に、ルナ達は絶句する。一体、彼は何者だ。悪い人間には見えないが、ルナ達は念のため戦いに備える。

「……なんだって?」
「……ったから」
「え?」
「ボクが宿題をしなかったから! この王国はこんな状態になってしまったんだ!」

 ただのマジ**チだった。

「何言ってんだこいつ」
「なんて不幸なんだろう……。で、ものは相談なんだけど、城の外を徘徊している堕落した魔法使い達から、下級魔法使いの衣の切れ端を100個集めてきてくれない?」
「なんでそんな唐突にお使いを頼むんだよ! もうすこしマシな口実を用意してから言え!」
「ボクの予想が正しければ、これでクリティアスは救われるんだ! 悲劇を呼んだ罪人、自らの手によって……」
「だめだこりゃ……。行こう、こいつ狂ってる」

 しかし、彼女達は逆らえない。これは、彼女達の目的を果たすために用意された、定められた運命なのだから……。

「ヴァ……」

 先ほどまでおとなしかった翁加が、再び低い声で呻き声を上げ始めた。


 ***

「ふぅ……ようやく終わったな」

 今回の依頼もアイテム収集。現地へ赴くのはルナと翁加の二人だけ。他の三人は街中の調査をする手筈だ。
 頼まれたのは100個だというのに、ルナ達は五人で活動している。ゆえに500個集めなければならないという超次元理論。

「ヴァ……」
「おい翁加……大丈夫か?(頭)」
「ふぇっ……? あ、ああ……気にするな。最近へびぃめたるにハマってるんじゃ」
「それならいいんだが……」
「ヴァ……」
「……戻ろう」

 ……それにしても、こんな布切れを何に使うんだ?
 ルナは疑問を浮かべたまま、少年のもとへ戻った。

「おい、持って来たぞ」
「あ、ありがとう! これでボクの宿題が終わる! 早速ベアトリーチェ先生に提出してくるよ!」
「は?」
「やっぱりただのお使いじゃねえか! あのクソガキ!」

 フラネーヴェの沸点は相変わらず低い。クソガキと言っているが彼女のほうが年下である。

「いや、もしかしたらこれで〈クリティアス〉は平和を取り戻すんじゃ――」
「んなわけあるかっ! 考えんでもわかるわ!(逆らえないけど!)」

 しばらくすると、チェンが戻ってきた。その表情は相変わらず曇ったままである。きっと、王国が救えなかった自分を責めているのだろう。足取りもどこか覚束ない。

「……ボクの勘違いだったのかな? おかしいな……。あ、さっき手伝ってくれた人だ。ありがとうね。結果は予想とは違って〈クリティアス〉の姿は戻らないけど……」

 そう嘆きながらチェンはため息を漏らす。

「本気で元通りになると思ってたのかよ! やっぱこいつおかしいって……!」
「この王国がこんなふうになった日、ボクは宿題が終わってなくて、学校へ行きたくなかったんだ。心の底から“学校なんかなくなればいい!”って思った」

 チェンは唐突に自分語りを始める。確かに、大学生にとって課題とは大きな壁の一つといえるだろう。普段の講義と違って『一限ピッ』で解決出来るものでないし、かといってネットの力でデッドコピーをすればまともな評価はもらえない。
 大学生という人生全体の夏休みといえる貴重な時間を、些細な障壁に奪われる。逆らえば、待つのは留年という名の黒い沼であり、そこに流れるは事実を知った両親の――。

「おい世界観ブレはじめてんぞ! それくらいにしとけよ!」
「……? ところが、本当に暗黒の魔法使いが攻めてきて、学校が閉鎖されたんだ。もしかしたら今の状況はボクの隠された力のせいかもしれない。学校に行きたくないというボクの願望がそうさせたんじゃないかって」

 この少年、ただの中二病である。魔法大学という大それた機関に通いながらも、考える事はあらゆる挙動が初々しい、未だ挫折と孤独を知らない中学生となんら変わりはない。

「それで、さっき宿題を全て終わらせて教授に提出してきたわけさ。けど、王国は本来の姿を取り戻さなかったし、その兆しも全く見えない。こんな大変な状況なのに、宿題を提出するなんて、と無駄に教授を感激させただけ」
「……いや、それ感激してねえから……与えてんの失望だから……」

 ――まずいな。
 ルナは戦慄していた。この少年は、フラネーヴェのツッコミが追いつかないほどに狂気に溢れている。翁加は「ヴァ……」と呻き、斧百合は立ちながらうたた寝している。ノームサーナは空気である。
 モンスターではなく、ただ一人の少年が、ルナのパーティを壊滅的状況に導いた。

「はあ……。本当に力が抜けるね。宿題以外は別に学校も悪くなかったのになぁ。友達もみんないなくなっちゃったし、家にいても特にやることはないし、つまんない!」
「…………」
「…………」
「え、終わり!?」

 何も進展がないんですけど!

「あ、そうだ。こんな状況でも上手くやっているビアンカのような子もいるけどね。もしだったら君達も彼女に会ってみたら?」
「ヴァ……」

 嫌な予感しかしない。いや、彼女達を取り巻く予感は既に確信へと変わっていた。

「ビアンカの奴、いつもは居眠りばかりしていたのに急に活発になって。もしかしたら彼女は暗黒の魔法使いの分身……? いや、隠れた能力者だったりして?」

 彼女達の終わりの見えない〈クリティアス〉の調査は、まだ続く。
 ビアンカを探すため、ルナ達は街中を重々しい足取りで歩き出した。



 リアル中二病チェンの紹介するビアンカとは一体何者なのか……!?
 王国の惨状を知ったルナ一行の前に次々と立ちはだかるOTSUKAI軍団――そして、翁加の呻き声の正体が明かされる……!?

 次回、第四話『お使いという名のバトンは進み続ける。過去から今、そしてまだ見ぬ未来へ向かって――』

 お楽しみに!!




 要求量5倍の前提クエストはひじょうにたのしいのでみなさんにおすすめです
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[ 2015/12/14 23:43 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(0)
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プロフィール

オノユリス!

Author:オノユリス!
1993年10月11日生まれ。
性別は男です。

趣味のゲームや小説について書いていきます!



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