これは私の日記帳であり、箱庭であり――そして、帰る場所である。

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第六話『この中に一人女王がいる!』

  
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* 王宮の侍従 *

「先ほどのメイド長の失礼な態度、お詫びします。王女様の面倒をみながら王宮のほかの方々の面倒も見なければならないのでメイド長も大変だと思います」

 王宮の侍従をしていたと言うイアンは、深々と頭を下げながら謝罪した。若くして洗練されたその礼儀に、それまで苛立ちを覚えていたルナ達は馬鹿馬鹿しくなって恐縮してしまう。

「……私達は王女に謁見して、城が浮かび上がる当初の事を尋ねたかっただけだ。それがこれほどまでに除け者にされるとはな……」
「ええ。今の状況が続けば、ルナ様達は恐らく一生王女様には会えないでしょう。そこで、いい事を思いついたのですが、試してみないですか?」

 イアンから発せられた「王女様には会えない」という言葉にルナ達は違和感を覚えた。交流こそしていないものの、王女には既に会っている。
 だけどそれは、言葉のあやだろうという事で片付けてしまった。

「市場にいるクリプ兄さんが売っている高級ハンカチを“王女様に捧げる献上品”だと言ってメイド長に渡してください。そうすればきっと席をはずしますから。その隙にルナ様は王女様に会ってお話をするのです」
「そんなうまくいくものか……? それ」
「物は試しだ。やってみるしかあるまい」

 ルナ達は藁にもすがる思いで市場へと向かった。
 〈クリティアス〉の市場にも、現在のメイプルワールドと同じようにさまざまな武器、防具が売られている。別に大した品が売っているようには思えなかったが。

「お前がクリプか?」
「おう、いらっしゃい」
「高級ハンカチをくれ」
「へぇー、お客さん旅の人か。結構な金を持ってるようだな?」
「……いくら払えばいい」

 クリプは悪い商売人の顔をする。高級と名のつくくらいなんだから、ルナ達もそれなりの額は覚悟していた。

「へっ……10万だ。どうす――」
「買う。ありがとう」
「…………ま、まいど」

 ルナのポケットマネーは860万――大した額ではない。そもそもモンスターを倒せれば一匹あたり1000メルほど手に入るのだから。どんなに貧乏な冒険者だとしても10万の商品を買う事など容易い。
 そもそも、メイプルワールドの住民達は随分と呑気な商売をしている。安定しすぎている――とも言える。冒険者間の物価はインフレーションの道を辿る一方だ。
 ただの真っ白な書物を一枚やりとりするだけで、少なくとも2000万もの大金が動くのだ。真っ白である。そこらへんの自由帳と同じだ。
 どこぞの海底都市では買った剣の値段が売却値よりも安いという事があった。魚介類に商売させるからこうなるのだ。呑気を通り越してバカである。

「これが高級ハンカチか……。確かになんか青く光ってるし高級っぽいな」
「刺繍に魔法が込められてるようですのね。確かに持ってれば身にかかる危機は防げそうですの」
「ほう、便利だな。――それで、これをあの召し使いに渡せばいいのか」

 ルナ達は旅館に戻った。根拠のない期待から、どことなく歩く速度が早くなっていた。

「おい。召し使いはいるか」
「何かご用ですか? 申し訳ないですが王女様の謁見を許可できないことに変わりはありませんよ」
「おうじょさまにさしあげるけんじょうひんをもってきました(棒読み)」
「こ、これは……! 災いを防ぐ魔法の刺繍が施されたハンカチですわね。感謝いたします。これこそまさに王女様に必要なものです。一刻も早く王女様にお渡しします」

 そういうと、召し使いは急ぎ足で旅館の外に出て行った。
 王女様は目の前にいるというのに、どういう事だ……?
 しかしこれは、王女と接するまたとないチャンスだ。ルナは王女に近づき、声をかける。

「お前が〈クリティアス〉の王女、ミリアムか。少し話がしたい。拒否権はない、わかったか」
「ちょ、ちょっとルナ! 一応王女様ですのよ! そんな最終的にやられそうな悪の組織の中ボスみたいな話し方やめなさいですの!」
「あ、あなた方がパルマとお話しているのは何度も見ました……。ですが、申し訳ないですが……本当に私は何も知らないんです……」
「めっちゃ怯えてるじゃないですの! 謝るですの!」
「うっ、す、すまない……」

 しかし、ミリアム王女の怯え方は普通ではなかった。
 そしてぽろぽろと涙を溢し始めた。

「ううぅ……、突然城から逃げなければならない状況も怖かったのに……。お父様から頂いた大切なクシまで失くしてしまって……毎日が不安で仕方ありません……」
「クシ……?」
「そ、そうです! 本当に申し訳ありませんが……ルナさん、よろしければ私が失くしたクシを探してきてくれませんか……? それがあれば心が落ち着くと思うんです……」
「それは随分と難易度の高い依頼だな……。森の中にいる数多くのモンスターの中から一つのクシを見つけろというのか……」
「はい……。モンスターの手に渡っているとすれば、もう私にはどうする事も出来ないので……ぐすん……」
「あーもう、わかった。探してくるよ……」


 ***

 森の中で燃え上がる武器の亡霊達を、ルナはただひたすらに斬り伏せる。
 その時、一匹の亡霊が古めかしい木のクシを落とした。

「ん? これかな。なんでこれを亡霊が持ってんだよ……」

 野暮である。
 ルナ達は王女の元へ戻った。

「私の木のクシを本当に持ってきたんですか? ありがとうございます! 高いものではないですが……私にとってはただ一つの宝物なんです……」
「よかったですのね!」
「…………」

 王女はほっとした様子こそ見せたものの、未だ浮かない顔をしている。
 避難生活でそれほど疲弊しているのだろうか。大事をとってルナ達は一度撤収しようとした。その時、王女の表情に何か決意のようなものが揺らめき始める。

「……恩人であるルナ様方に、これ以上嘘を吐くわけにはいきませんね」
「何?」
「本当のことを申しますと、私は本物の王女ではありません」
「……なんだと?」

 パルマの不可解な行動から何となくそんな気はしていたものの、予感が事実となるならば、それは驚愕という波となって押し寄せる。

「あの日――国王陛下がお姿を消した理由を未だ私達は知りません。それで残された王女様を護るため、しがないメイドだった私が王女様のふりをしていたんです。……見ての通り、私が上手に王女様のふりが出来なくて、パルマ様は焦っていらっしゃいます」
「ま、待て。そうすると、本物の王女は今どこで何をしているんだ」
「……私達と一緒に逃げて身を隠しています。いくら恩人とはいえ、あの方の場所をお教えするわけにはいきません。……そろそろパルマ様がお戻りになります。お話はここまでです」
「そんな……」
「心優しい旅の方。私からお話することはもう出来ませんが……あなた達は信頼できます。この〈クリティアス〉を……そして可哀想な王女様を、どうか助けてください……!」

 ミリアムは本当の王女を護るための偽の王女。そして本物の王女は他に存在する。
 しかしミリアムは「王女は一緒に避難している」と言っていた。こんな落ち着かない状況じゃ遠くまで逃げるのは無理がある。

「……王女は間違いなく、この近くにいる」
「ええ……でも私達は王女様の情報を何一つ持っていないですのよ。“王女”なのだから、性別は女、ということくらいしか……」
「ミリアムは既に王女じゃないと言っているし、それを覗けば私達が出会った女性は……四人か。仕方ない、手探りになるけど彼女達に声を掛けてみよう」


 ――容疑者1.未だデレを見せないメイド長・パルマ


「おい、召し使い」
「なんですか? 私はあなたに仕えているわけでもないのに、馴れ馴れしい……」

 声を掛けたはいいが、この老婆が女王……? そんな夢のない話あってたまるか。
 とはいったものの、現実は非情である事が多い。違いますようにと天に祈りながら、ルナは尋ねた。

「単刀直入に言う。本物の王女はどこだ?」
「はい? 本物の王女様ですって? どこでそんな話を聞いたんですか? 全く意味がわかりませんね」

 一つの問いに対し、四つの反撃をしかけてくるとは、さすがメイド長。あなどれない。
 あくまでしらを切るつもりだと察し、ルナも直球で攻めることにした。

「お前は女王か?」
「冗談でもそんなことを軽々しく口にするのはおやめなさい。一介のメイド長でしかない私と女王様とを一緒にするなんて……話になりません!」
「そうか。まぁそうだよな」

 なぜかルナ達は安堵の息を漏らしていた。

「……しかし、今のお話で〈クリティアス〉に降りかかった災いの恐ろしさを実感しました。外の世界の方々が、王女様のことも、私達のことも全て忘れ去ってしまった時代に生きているという事を……。〈クリティアス〉は一体これからどうなるんでしょうか……」



 ――容疑者2.ペットのフクロウといつも一緒! 武器商人のニタ

「私と翁加は森でモンスターを相手にしていることが多かったから、武器商人のことについては殆ど知らないんだが……」
「私に任せるですの。街中では私の方が魔法使いってこともあって親しみやすいですの」

 斧百合はニタの居る方に向かっていった。

「いらっしゃいませぇ。あら? 斧百合ちゃん」
「ごめんなさいですの。今回は買い物じゃなくて、尋ねたいことがあって……」
「尋ねたいこと、ですかぁ? ……あら? そちらの方は?」

 斧百合の背後にいたルナに、ニタが気づく。

「あー、こいつは刃神ルナですの。私の旅の仲間ですのよ」
「そうなんですかぁ! はじめまして!」

 そう言ってニタはルナに向けて煌びやかな笑顔を見せた。まぶしい!

「よ、よろしく……。ところで、消えた王女について何か知らないか?」
「王女様ですかぁ? 旅館のほうに避難しているという事は存じてますよぉ。でもごめんなさい……店のお仕事が忙しくって、直接お会いしたことはないんです……」
「そうか……変なことを聞くが、あなたが女王様本人なのではないか?」

 ルナも自分で不自然な問いかけだとは分かっていたけれども、こうするしかなかった。一人ずつ、虱潰しに探していくしかないのである。
 しかしニタは顔を真っ赤に染めて否定した。

「へ、わ、私が女王様? そ、そそ、そんな! 私は一介の武器屋の店員に過ぎませんよ! それに私のお父さんは、王様ではなく南東で警備をしているドストフという兵士ですよぉ」
「ま、マジで……」

 それもそれで、衝撃の事実ではある。あんなむさ苦しいおっさんからこんな可憐な少女が生まれるなんて……信じられない。

「も、もうっ! びっくりさせないでくださいよぉ。面白い発想ではありますけど……そういう冗談はもう少し仲良くなってから……ね?」
「あ、ああ……。悪かった」
「王女様ってどんな方なんでしょうねぇ? きっととっても綺麗なんだろうなぁ――」

 結論から言えば、ニタは王女ではなかった。
 だがそのまぶしい笑顔が、調査に疲弊していたルナ達を癒したのもまた事実。

「……もうあの子が王女様でいいんじゃないかな……」

 そんな呟きは明けない夜空に溶けていくだけである。


 ――容疑者3.魔法の解析ならお任せあれ☆女教師・ベアトリーチェ

「あら、ルナ様方ではありませんか。お久しぶりです」
「…………」
「どうかされましたか?」
「……ないな」
「い、いや念のため聞くですの!」
「いやだ! 例え母国ではないとしても! こんな女性が王女様だなんて信じたくないッ!」
「私が王女……? 面白い冗談を言いますね。ですが“ヘカトン陛下”の一人娘である王女様がこんなおばさんなわけないでしょ?」

 それな。

「あなた方がなぜ消えた王女様の行方を捜しているのかわかりませんし、そもそも消えた理由すら不明な現状、あなた方に何らかの助言をするのはやめておきます。あなた方を信頼していないわけではありません。ただ単に、無責任な言葉で他者を翻弄したくないのです」
「ああ……。変なことを聞いてすまなかった」

 ベアトリーチェは高度な魔法を扱う大学の教師なだけあってよく出来た人間である。
 今のルナには魔術は使えない。しかしこれがもしその才覚に目覚めていたとしたならば、彼女に師事していただろう。


 ――容疑者4.いたずら魔法少女☆ビアンカ

 ビアンカは魔法大学の生徒だ。その性格はどこかルナに似たものがあり、それは彼女自身自覚していたことである。
 ゆえに、声を掛けるのに手間は掛からなかった。

「ビアンカ」
「あらルナじゃない。久しぶり」
「突然で悪いんだが、消えた王女について教えて欲しい」
「王女様? え、消えたの? じゃあ今はいないんだ」
「そこからか! ……いや、違うな。もしかしてお前が王女本人なんじゃないか? いや、そうだろう!」
「唐突にあふれ出すその自信は一体どこからきたんですの……」
「私が王女? そんなわけないでしょ。王女として生きるとか、そんなつまんない人生なんて考えただけでゾッとするわ。絶対に嫌よ」
「……そういう考え方もあるのか」

 ***
 
 結局、容疑者として尋ねた女性陣は皆王女である事を否定した。本当の女王が誰なのか、未だ確信は持てないまま、ルナ達は街中で途方にくれていた。

「結局調査も行き止まり……。誰か救いの手を差し伸べてくれる人はいないのですの……?」
「いや……一つだけ分かったことがある」
「え……なんですの?」
「この事件が迷宮入りだという事だ!」


 続く!!




 尺の関係で打ち切りました。
 次回! 第七話『ドキドキっ! 王女様は男の娘!? 閉ざされた王国で巻き起こる禁断の情事(はぁと』
 おたのしみに!

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[ 2015/12/20 16:46 ] メイプルストーリー クリティアス | TB(-) | CM(2)
・3・
オフレポの続きはよなの
[ 2016/01/14 15:31 ] [ 編集 ]
ああ……。
[ 2016/04/13 11:06 ] [ 編集 ]
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プロフィール

オノユリス!

Author:オノユリス!
1993年10月11日生まれ。
性別は男です。

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